7 ページ7
２人との分かれ道に着いても、まだ雨は降っていた。
傘は２つ、私が別方向。
由真ちゃんも阿部くんも、すんなりバイバイできないことを悟っていて。
「じゃあ私こっちだから、由真ちゃんが濡れないようにここからは阿部くんに託すね」
そう言うと２人はどこか照れたように目を合わせる。
「亮平と相合傘なんて保育園ぶりかな？」
「そうかもね、」
視界がいつもより悪い中でも彼が緊張しているのが分かって笑顔になる。
「じゃあまたね」
「バイバイ！」
「またね」
数歩歩いてから振り返る。
雨に打たれないように２人はちゃんと１つの傘で歩いていて、なんだかすごく微笑ましくなった。
.
その翌日。
「あ、A！おはよう！」
「由真ちゃん！おはよう」
偶然、由真ちゃんと登校のタイミングが同じになった。
靴を履き替えながら、阿部くんと傘を分け合った昨日の帰り道を聞こうとしたその時。
「藤田さん」
背後から男の子の声がした。
「あ、昨日の！」
由真ちゃんが傘を貸した子だ。ちゃんとその折り畳み傘を握りしめている。
「昨日は本当にありがとう」
「ううん」
彼はお礼を言って返してからも、由真ちゃんを見つめている。
「同じクラスだよね？」
「えっ？」
そうなんだ。
由真ちゃんも驚いていると、彼は「入学したばっかだしね」と笑顔を見せる。
「ごめん、覚えきれてなくて」
「ううん。じゃあ改めて。目黒蓮です」
「改めて、藤田由真です。あと、この子は２組のA」
由真ちゃんは私のことも紹介してくれて、互いに会釈した目黒くんが、
「藤田さん。連絡先教えて」
「連絡先？」
「うん。クラス一緒だから、授業のこととか色々聞くことあるだろうし」
「確かに！LINEでいい？」
「うん。ありがとう」
素直に応じる由真ちゃんと対照的に、
私は阿部くんのことが頭に浮かんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 291人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
キキララ(プロフ) - さあさんさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけたんですね😊作者としてたいへん嬉しいです！ありがとうございます✨ (5月1日 9時) (
レス) id: 16c60907ce (このIDを非表示/違反報告)
さあさん(プロフ) - 面白くて一気に読み終えました。情景が浮かんでキュンキュンします。。 (5月1日 7時) (レス) @page46 id: a428b66a33 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キキララ
| 作成日時：2023年11月19日 17時
