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彼が私を見る。
もう涙をしまっておくことができないけど、ちゃんと本音を伝えようと思った。
「素敵な方ですね」
私が彼女にそう言ったのが阿部さんには驚きに値していた。
鼻をすすりながら、阿部さんの隣へ移動する。
「ごめんなさい。理由知ったら諦めるって言いましたけどできません」
「え…」
「自分がいるから阿部さんが他の人と付き合わないなんて、彼女さんはそんなこと望んでない」
「…何でそう言い切れるんですか」
「同じだからです」
「…え？」
「私も阿部さんが好きだから、分かるんです。
好きな人には、自分のことで何かを諦めてほしくない」
阿部さん、と続けて言葉をかける。
「他の人と付き合うことは、彼女さんを裏切ることじゃない」
「え…？」
「付き合ってほしいから薄い覚悟のまま言ってるんじゃないです。話したい時に、私に彼女さんの話たくさんしてください。彼女さんのこと、いつまでも特別に想っていてください」
「Aさん…」
さらに涙を溢れさせる阿部さんを、同じ顔になりながら私は抱きしめた。
「優しすぎるところも、
彼女さんを一途に想い続けてるところも、
阿部さんの全部が、私は大好きです」
包み隠さず伝えたら、阿部さんの腕も私に回る。
思いが通じたことを実感して、それへの涙も溢れてきた。
「Aさん。
ありがとう。
僕でいいなら…一緒にいてください」
私は頷く。
泣き続ける阿部さんと、気が済むまで互いを包み込んだ。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2023年10月20日 17時
