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「阿部さんって何年生まれですか？」
「93年です」
「じゃあ私より2つお兄さんですね」
「あはは、お兄さんっていいですね」
2人で街を歩くのは初めてで胸が鳴る。
寒いはずなのにどこか熱い。
「僕、こっちなので」
暫くしてから彼が指したのは私の家とは別方向。
「じゃあ、また」
「…阿部さん！」
ん？と振り向いた彼に、距離を詰めた。
「…好きです」
「…」
「私と付き合ってくれませんか？」
.
「…ごめんなさい」
間を空けて紡いだのは、迷いではなく気遣いだということぐらい分かった。
「僕、
…もう恋愛はしないって決めてるんです」
…え？
悲しそうに、苦しそうに言った阿部さんは、
何でと聞く前に、私の元から離れていった。
.
しっかり振られた。
"…もう恋愛はしないって決めてるんです"
断った後の、その言葉が木霊する。
どういう意味か知りたい。
その意味を教えず、苦しそうに残すだけなんてしてほしくなかった。
.
あれから数日後。
私は、誰もいない喫茶店の隅の席に座っていた。
手が震える。その度に深呼吸をする。
カラカラ。
「マスター？」
その声に、私は視線を送った。
あっという間に目が合って、事情を話して貸切にしてくれていたマスターが阿部さんの背中を押す。
「…Aさん」
「紅茶とカフェラテで」
マスターが頷いて、
阿部さんは向かい側に座ってくれた。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2023年10月20日 17時
