#4「私を選んでくれませんか」×Red ページ13
(You side)
「せんぱーい！」
高い声と捉えた甘い香水の匂い。
定時直前の疲れた時間帯の体に堪えないと言えば嘘になるけど、先輩らしく落ち着いて反応した。
「どうしたの？」
「さっき課長にこの資料作ってって言われたんですけど分からなくて…先輩分かります？」
「うん。これはね…」
「えー本当ですか！じゃあお願いしていいですか？」
「え？」
「ありがとうございますっ！」
定時を知らせるチャイムが鳴って、後輩は荷物を持って「お疲れ様です！」と帰っていった。
「…嘘じゃん」
あのゆるふわ系後輩女子が最近の私の悩みの種。
思いもよらない角度からくらわされるから、防ぎようがない。
そしてそういう子に限って男性社員からは人気で。
「Aさん」
そんな時聞こえた優しい声。
「…宮舘さん。おつかれ様です」
「おつかれ。あのさ、さっき渡してくれた資料確認したんだけど、ここの数値って合ってる？」
「…間違えてます。すみません、すぐ直します」
「1個桁ずれてるだけだよね？俺直しとくよ」
「いやそれは、」
「仕事増やされたでしょ？」
「…え？」
思わず後輩に頼まれた資料に目線が移動する。
「…すみません」
「こっちこそ、すぐ帰っちゃったからって注意できなくてごめん。だから直させて？」
「ありがとうございます」
優しく頷いてくれた後、先輩の背中を少し見つめていた。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2023年10月20日 17時
