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(Raul side)
「...Aさん、」
翌日の夜。
学校では話せなかったAさんから、電話がかかってきた。
「...もしもし」
.
"...もしもし、私。
昨日、びっくりさせてごめん"
「ううん、僕のことはいいから。
嫌だったよね、あんなこと言われて」
"ラウールくん..."
沈黙が生まれる。
だけど、それを彼女が破る。
"深澤先輩から、ラウールくんが昨日から元気ないって聞いて電話したんだ。
それに謝りたかったけど、ちゃんとお礼も言いたかった"
「...お礼？」
"庇ってくれたから、私のこと。
それにその後も、一人のほうがいいんじゃないかってまた私のこと考えてくれて。
一人にしてくれたのが嬉しかったってよりかは、そうやってラウールくんが思いやってくれたのが嬉しかったんだ"
「Aさん...」
僕の心が安心感で覆われて照らされていく。
"ラウールくん"
「ん？」
"本当にありがとう"
「...ううん、」
"こんな事情知られたらどう思われるんだろうって、ずっと怖かった"
「分かるよ。僕も養子のこと、人に言うのは勇気要るし」
"そうだよね。私も同じ。
でも、ラウールくんも深澤先輩も何も気にせず受け入れてくれて、感謝してるんだ。本当、ありがとう"
Aさんはありがとうを繰り返した。
それから電話が切れる。
.
ただなんとなく、気になってただけだった。
それが今、
"気になる"が、
"好き"に、変わった。
僕は、どこか儚くて、それでいてずっと優しい、
Aさんが好きになった。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2022年12月1日 17時
