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何で、僕に?
涙を少し拭ってから電話を取ったけどまだ残っていて、"ごめん、後でかけ直そっか?"と言われたけど、大丈夫と返した。
"...あのさ、...今朝"
「...うん」
"友達との会話、教室だったから聞こえちゃって"
彼女も吹奏楽部。
よく考えれば、Aさんがお姉ちゃんの直属の後輩だから僕らは話せたといっても過言じゃない。
"それで...何でか分かんないけど、心配になって"
「そっか。でも大丈夫だよ、別に」
"...嘘、ついてない?"
「...だいじょうぶ、だよ」
.
"私ね、深澤先輩から、ラウールくんの話よく聞くんだ"
「...え」
"この前の遠足で話しかけてくれましたって言ったら、すっごい笑顔で、ラウいい子でしょ?って。私と違って段違いに人見知りで、弟なのに全然似てないんだって"
弟なのに、全然似てない。
お姉ちゃんの発した言葉でまた目頭が潤む。
"誰でも彼でもに話せない事情、色々あるのかもしれないけど。でも私は、ラウールくんと先輩は本当の姉弟だと思う"
「Aさん...」
"誰が何を言おうと、深澤先輩の弟はラウールくんだよ"
それだけ伝えたかったんだ、と紡いだAさん。
「ありがとう、Aさん...」
"ううん。先輩によろしくね"
「うん」
電話に出る前に落ち着かせたのが無駄になるぐらい僕は泣いてしまってるけど。もういいやって思えていた。
電話を切ってから、部屋をノックする音。
「ラウ」
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作者名:キキララ | 作成日時:2022年12月1日 17時