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何となくの気分で一人、外へ出る。
そんな時、見たことのある顔が見えた。
「...あっ」
思わず呟くと、その人も気付く。
.
「ラウールくん」
私服姿の阿部先輩がいた。塾帰りらしい。
「...あの」
「ん？」
「...暑く、ないですか？」
「暑いね。...あ、そういうこと？」
.
僕の意図を阿部先輩が汲み取ってくれた結果、コーヒーチェーン店に僕らはいる。
色々聞きたいことがあった。だから遠回しに誘った。
でも聞き出すには、自分から話題を振るしかないんだろう。
「僕、Aさんのことが好きなんです」
「...それは、」
「...恋、してて」
先輩の表情が若干変化した後、そう言葉を追加した。
「阿部先輩、Aさんと仲いいじゃないですか。だからアドバイスじゃないですけど...あったらなあなんて、」
すると目の前の人は、優しいながらもどこか達観したように笑う。
.
「アドバイスなんて...ないよ。むしろ褒めるところしかない。
ラウールくんはすごいね。誰かから教わったでもないのに、恋とか好きとかがちゃんと分かって」
「初心者ですけどね」
「関係ないよ。当事者になったことがある時点で、俺からしたら全然違う。きっと素敵なものなんだろうね、そういう気持ちって」
「先輩は、」
誰かを好きになったことないんですか？
そう言いかけて口をつぐんだ。
.
"知り合いにね、恋愛感情とそれ以上の感情を持ってない人がいて"
"しっかり振られて、今は完全に吹っ切れてる"
阿部先輩だったんだ。
気付いてよかった。じゃなきゃもっと傷つけてたかもしれない。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2022年12月1日 17時
