27 ページ27
蓮くんは遠くを見ながら話していて、その姿を見ると、きっと当時のことは鮮明に覚えているんだろうと思った。
「何で今好きになったんだろうって何回も思った。
まあ、それまで２人のものだったのに急に彼氏が現れたことが耐えられなかったんだろうけど」
「...その２人とは、結局どうなったの？」
恐る恐る聞いたけど、蓮くんの表情は穏やかだった。
「それが２人ともさ、一切俺のこと責めなかったんだ。
何にも悪くない２人が俺のせいで傷つけられたのに。
最初に俺の気持ちに気付いたのはその彼氏だった。
我慢しなくていいって言ってくれて、気持ち伝えさせてくれたんだ。
それで俺は好きだった子にも全部話して告白したけど、その子も真剣に、受け止めてくれた。
俺はそのことに感謝しかない。
結果的に振られたけど、もう何の未練も苦しさもない。
今はただ、誰よりも２人の幸せだけを願ってる」
「何かあれだね、ドラマみたいな恋だね」
「俺結ばれてないけど」
「そう、結ばれない珍しいやつ。
でも蓮くんの話聞いてたらハッピーエンドに思えてきた。世界で一番切ないハッピーエンド」
「それだわ。やっぱラウールは天才」
知らないのにお前すげえな、と蓮くんは笑った。
そして蓮くんが今度は立ち上がって僕を見る。
「何かあったらいつでも俺に相談してこいよ。あの２人には話せないこともあるっしょ」
「ああ、今僕らの帰りとジュースを待ってる２人？」
「そう。じゃあそろそろ戻るか」
「うん！」
再び隣を歩くこの人は、夜でも眩しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 205人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キキララ
| 作成日時：2022年12月1日 17時
