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正直、来てくれるか不安だった。
集合時間丁度に、恐る恐る部屋のドアを開ける。
照は、
待ってくれていた。
「...久しぶり」
「うん、久しぶり」
一瞬でドキドキし始める。
「照が何の曲練習してたのか楽しみだな」
「言ってなかったもんね」
「そうだよ、秘密とか言って」
漸く彼が笑う。
良かった。まず何とか話せた。
「じゃあ、弾くね」
「うん」
照がピアノの前に座る。
少し距離を取って私は座る。
そして照は楽譜とピアノを開けて弾き始める。
「うわ...」
彼が奏でた曲は愛の夢。
リストの代表曲。
ピアノをやっている人なら一度は弾きたいと思うような曲。
思えば、照のピアノをちゃんと聴いたのはこれが初めてだ。
彼のその優しさは演奏にも表れていて、暗い場所から連れて行ってくれそうな弾き方をする。
"あの曲、俺も好き"
"え?"
"さっき、弾いてた"
"こいつに何か用っすか?"
"聴けてよかった。なんかすごい幸せな気分になれた"
"デートですか?"
"え、いやあの、"
"まあそんなとこです"
"本当に覚えてない?"
"...俺、Aが好き"
"俺は、幼稚園の時と今の2回、Aを好きになったんだよ"
"自分が自覚してる以上に、Aは俺に好かれてるよ"
"そう思っててくんないとさ、俺持たないから。
気持ち分かって欲しくてさっきみたいな感情表現しちゃうから"
.
照が私以外の人のものになって欲しくない。
私、
この人が好きだ。
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作者名:キキララ | 作成日時:2022年8月22日 20時