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「今度はさ、照が弾いてるの聴きたいな」
「あ、俺が弾く側になるってこと？」
「そう。今何練習してるの？」
「...秘密」
「え、何で」
「聴かせるまでのお楽しみで。じゃあその日いつにするか約束しよ」
帰り道、照とそんな会話をする。
照のピアノを聴ける日は少し先になったけど楽しみに思った。
「照、こっちだよね」
「うん」
「じゃあね。今日はありがとう」
「うん、こっちこそ」
ここから彼と反対方向。
お互い小さく手を挙げて別れた。
でも別れてから十数秒もしないうち、
.
「...A」
反対方向のはずの照の声がする。
振り向いて確認する時間なんてなかった。
名前を呼んだ照は、そのまま私を背後から抱きしめる。
私を包む照の腕が見えること、
別れた後に照は私を追いかけてきた事実が、さらに鼓動を速くさせる。
「...ごめん、また自分勝手で」
「...照、」
彼が私の肩に顔をうずめる。
大きな体に包まれてるから守られてるような、どこかそんな安心感も存在するのに、
それを上回るドキドキも襲ってくる。
暫くして彼は腕を離して、私は反射的に振り返り向き合う。
.
「自分が自覚してる以上に、Aは俺に好かれてるよ」
「...えっ、」
「そう思っててくんないとさ、俺持たないから。
気持ち分かって欲しくてさっきみたいな感情表現しちゃうから」
愛おしそうに、照が私の頭に手を置く。
ゆっくり見つめられてその後再び彼と別れた。
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作者名：キキララ
| 作成日時：2022年8月22日 20時
