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そして照が続ける。
「でも、」
「ん?」
「Aが初恋だから今も好きなわけではなくて」
「え?」
「初恋は初恋で所詮過去のものだし、思い出に過ぎないから。
大学でAと再会した最初の頃は、俺のこと思い出されなくても別にいいって思ってた」
「じゃあ...」
「でも俺は、またAが好きになった。だから思い出して欲しくなって、覚えてる?なんて聞いた。
俺は、幼稚園の時と今の2回、Aを好きになったんだよ」
初恋の人との再会を運命と感じて舞い上がっているんじゃない。
照は、
私と初めて出会ったのが今だとしても、
きっと好きになってくれたんだ。
「...てかごめん、俺また自分のことばっか」
「ううん。そんなことない」
意外にも彼は、後先考えずガンガン進むタイプではないのかなと思った。
でも、何もしないわけでもない。
また控え目にお願いをされる。
「あとさA」
「ん?」
「実家から帰ったら頼みたいことがあって」
「頼みたいこと?」
「先に俺に聴かせて欲しい。バラード第1番」
「それは...大学のピアノでってこと?」
「うん。俺Aのピアノも好きだからさ」
ダメ?と聞かれる。
室内で2人きりになる緊張もあるけど、そんなことは断る理由にはならない気がして小さく頷いた。
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作者名:キキララ | 作成日時:2022年8月22日 20時