7 ページ11
そんなやりとりから間もなく、あの人は眠った。
聞こえてきた寝息に安堵して、電話を切った。
身体がポカポカと暖かい。
暖かいを通り越して、熱い。
息苦しさはもう無い。
胸は……あの人の声を聞く前とは違う風に、騒いでいる。
……ドキドキ、している。
発作の原因はあの人だ。
それは間違いない。
けれどそれを治める為に、あの人から離れてはいけなかった。
逆だ。
あの人に近付かなければならなかったのだ。
そして、気付かなければならなかった。
自分があの人のことを、大好きで仕方がないことに。
あの人との同居生活は、突然、けれど緩やかに始まった。
最初は確かにただの友達同士だった。
けれど、あの人とゆっくり、じっくり、同じ時間を過ごしているうちに。
無意識に甘えているうちに。
洗濯機の使い方がわからなくなるほどに、ドライヤーの重さを忘れるほどに、甘やかされていくうちに。
そんな風に、あの人に愛されるうちに。
自分も同じように、あの人のことを愛してしまっていたのだ。
そんなことにも気付かずに、認めずに、言葉にできずに、ただただ向けられる甘さに溶かされていくうちに、息が苦しく、身体を冷たく感じてしまっていた。
向けられる甘さの理由が、正体が、わからなくて酔ってしまったのだ。
あの人へのこの気持ちは、恋愛か、友愛か、はたまた家族愛か。
そのどれも当てはまるようで、当てはまらない。
うまく言葉には出来ないけれど、それよりももっと、甘くて、優しくて、まろやかで、ずっしりと重い…………。
とにかく、早く家に帰りたい。
朝までもう少し時間がある。
それまでに何度、あの人に会いたくなるだろうか。
起きていては待てそうもない。眠ったらすぐだよ、そう言った自分を思い出しながら瞳を閉じる。
次に目が覚めたら早く家に帰り、あの人にただいまを言うのだ。
そして、やっと気付けたあの人へのこの気持ちを、伝えなければ。
電話では伝えそびれてしまったから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
worjfkl - すごくベタ甘な話なのに、ケロッと読めて、心が温まりました。改めて、家族に感謝を伝えたくなりました。個人的には、（自分と照らし合わせられるため）第三人称だったのが嬉しかったです。ありがとうございます。 (2021年10月25日 3時) (
レス) @page14 id: a3be580124 (このIDを非表示/違反報告)
レイン(プロフ) - ふらんどーる@潤くんは天使さん» コメントありがとうございます……！ そうなんです、二人とも第三者から見るとかなり重度の依存関係にあります笑 サラッとゲロ甘なものを書きたかったので、そこに触れてくださりとても嬉しいです。 (2020年8月31日 18時) (レス) id: 9087ee5c39 (このIDを非表示/違反報告)
ふらんどーる@潤くんは天使 - 共依存...ドライヤーも重く感じるくらいに、ご飯が不味く感じるくらいに甘やかされていたんでしょうか、ベタ甘ですね(？？？？) この二人には幸せになって欲しい物です。...数分しか待てないってそれ重度では(( (2020年8月29日 18時) (レス) id: 7f877cb593 (このIDを非表示/違反報告)
レイン(プロフ) - まるめさん» 丁寧に読んでくださった上にコメントまで、ありがとうございます。かけていただいた言葉全てが大変嬉しく……お恥ずかしいことに、感謝以外の言葉を上手く述べられません。重ね重ねありがとうございます。 (2020年8月29日 3時) (レス) id: 1a7a73f4a7 (このIDを非表示/違反報告)
まるめ(プロフ) - あとがきまで読んで感動しました。一つに恋愛と言っても、愛と言っても求める形は人それぞれですよね。読み手を思いやるレインさんのその心がとても素敵です。 (2020年4月24日 20時) (レス) id: 1093df9400 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レイン | 作成日時：2020年3月17日 18時
