第7夜01−一星目線− ページ30
「…間抜けな顔」
規則正しい寝息を立てるA
こうやってわざわざ様子を見に来てやったのに
起きる気配は一切無くて
間抜けな寝顔を見ていたら
無性に腹が立ってきた
「起きろよ馬鹿。血付けたまま来たらお前また倒れるだろ。だから先に来てやったのに、いつまで寝てるつもり？」
きゅっと鼻を摘むと
眉間に皺を寄せたAが微かに瞼を震わせる
ゆっくりと目を開けたAは
まだ夢の中にいるかのような表情のまま
「あ、起きた」
「ん……」
「もう大丈夫なわけ？」
「んー………」
「ったく、起きてんのか寝てんのかハッキリしろよ。心配してやってんのに」
「…ありが……と………」
ふにゃりと笑うA
それは警戒心なんて言葉から程遠い表情で
ぎゅっと心臓を掴まれるような感覚に陥る
( ＿＿＿＿お前、こんな顔できんのかよ)
俺のこと見る時は
いつも怯えきった顔してるくせに
大好きなきぃちゃんと間違えてんじゃねえの
「…ムカつく」
コイツと関わることは"使命"に過ぎない
それなのに
「きぃ、ちゃん………？」
「…チッ、五月蝿い！黙れ………！！」
行き場の無い憤りをぶつけるように唇を重ねる
ほらやっぱり
その顔は俺に向けられたものじゃない
分かってる、分かってるんだよ
「＿＿＿＿っ、い、ちほしくん………っ」
ハッと我に返ったAの瞳に滲む恐怖の色
そうだ、それでいい
お前はそうやって俺に怯えていればいいんだ
「酷いな、そんな顔しなくたっていいだろ？」
悪戯に覆い被さった俺に手を伸ばしたAは
俺の目尻にそっと触れる
予想外の行動に呆気に取られていると
Aは蚊の鳴くような声で問いかけた
「どうして、泣いてるの…？」
「…は？……っ、泣いてない！何で、俺が＿＿＿＿」
視界がぼやける
何で
「一星くん」
自分を組み敷いている男に
どうしてそんな顔できるんだよ
心の底から心配してるみたいな顔
「お前…っ、今俺に押し倒されてるの分かってんのか………」
「…うん、分かってる」
「……クッソ、ふざけんな…………！」
とめどなく流れ落ちる涙を指先で拭ったA
その華奢な腕が
躊躇いがちに俺の首に回される
( ＿＿＿＿嗚呼、もうどうにでもなれ)
この感情が何なのか俺にも分からない
でも今は
目の前の優しさに縋りたくて堪らない
＿＿＿＿ 俺は、そっと彼女を抱き寄せた
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しろ(プロフ) - もちゃさん» 前作まで読んでくださったんですね！ありがとうございます。最後までお付き合いいただければ幸いです〜！！ (2021年1月22日 18時) (
レス) id: b4067e14bd (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ - 前作のもの全部読みました！ 夢主ちゃんのちょっと悪女っぷりが、良かったです！ 更新頑張ってください (2021年1月22日 7時) (レス) id: d4957ad8a3 (このIDを非表示/違反報告)
イナイレ好き - ネコさん» 言いたかった事と意味が違っていたらごめんなさい (2020年4月7日 14時) (レス) id: 573d988362 (このIDを非表示/違反報告)
イナイレ好き - ネコさん» 分かります これの一星君（黒×甘い感じ）がめっちゃ好きです (2020年4月6日 14時) (レス) id: 573d988362 (このIDを非表示/違反報告)
ネコ - 更新頑張ってください！ (2019年12月17日 20時) (レス) id: d9ca8b4073 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろ | 作成日時：2019年1月10日 0時
