問題児が2年生になった件について【星章学園】 (ページ10)

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09. 灰崎くんの決意ページ10

「霧野、ちょっと来い」

着替え終わった霧野を呼び出したのは灰崎だった

部員達に順次解散するよう指示を残して
2人は人気の無くなった観客席に上がる

先程まで自分達が立っていたフィールドは
青々と輝いていた

「…やっぱり、勝ちたかった」

先に口を開いたのは霧野の方だった

夕陽を眺めるその眼差しは柔らかくて
灰崎は思わず息を呑む

「あの時シュートを決められていたら、皇帝ペンギン2号を打たせる隙を与えなかったら…って、考え始めたら止まらなかった」

でもね、と振り向いた霧野は
真っ直ぐに灰崎を見据えて微笑んだ

"フィールドの天使"という名前に相応しい
純粋な笑顔で

「勝利しか知らなかった私がここまで貪欲になれたのは星章のお陰。強いて言えば、あんたのお陰」

「俺の…？」

「怖いくらい真っ直ぐに勝利に向かっていくあんたが隣に居たから、迷うことなく戦えた。日本代表に選ばれた時も、臆することなくプレー出来た。灰崎が居なかったら、キャプテンも出来なかったと思う。だから、ありがとね」

「…急に素直になるな、調子狂うだろうか」

「何よ、折角良い事言ってあげて＿＿＿＿」

彼女の身体を抱き寄せるのに
ほんの1秒も必要無かった

"愛しい"という想いが
腹の底からとめどなく湧き上がってきて苦しい

溢れ出る感情をぶつけるかのように唇を重ねた

「…試合が始まる前に、決めていたことがある」

ほぼゼロに等しい距離で顔を覗き込む灰崎

その瞳に滲む熱は霧野にも伝わったようで
心臓が音を立てて脈を打つ

「優勝したら、自分の気持ちを隠すなんて俺らしくないことは止めようってな。まさか負けるなんて予想外だ」

「何の話か、全然分かんない…っ」

目線を逸らす霧野の顔からは
余裕綽々といった普段の様子は一切窺えず

灰崎は思わず口元を緩めると
こっち向けよ、と彼女の頬に手を添えた

「嘘付け。気付いてないとは言わせないからな」

「…っ、馬鹿…！」

今にも泣き出しそうな彼女が
愛おしくて堪らない

「A」

"好きだ、お前の事が"