問題児が2年生になった件について【星章学園】 (ページ9)

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08. 天使の涙と悪魔の微笑みページ9

「今年のフットボールフロンティア優勝は、帝国学園に決まりました＿＿＿＿!!」

青空を背景に舞い落ちる紙吹雪

大きな歓声に包まれたスタジアムの真ん中で
灰崎は汗を拭った

これが全力を尽くした結果だと
あと1歩及ばなかったことを静かに受け入れる

キャプテンマークをぎゅっと握り締めて
霧野は肩で呼吸をしていた

髪に隠された横顔から
その表情を窺うことは出来ない

「霧野」

灰崎が声をかけると彼女は静かに顔を上げた

涙に濡れた瞳に滲むのは悔しさで
彼女の想いが痛い程伝わってくる

「…お疲れ」

言葉が見つからないもどかしさ

今すぐ彼女を抱き締めたいのは
好きだから、とかそういう理由ではなくて

共に戦ってきた仲間だからこそ
生まれた感情だった

「ごめん、ごめん灰崎…っ」

「ばーか。何で謝るんだよ」

彼女の後頭部に手を伸ばして引き寄せる

胸から伝わってくる彼女の熱と涙は
誰よりも熱い想いを持つ証拠だった

「お前がキャプテンだからここまで来れた。胸張って堂々としてろ。俺だけじゃない、全員がそう思ってるはずだ」

見ろ、と灰崎が示した先には
涙を流す後輩達の姿があった

キャプテン！と次々駆け寄ってくる部員達の顔は
悔しさが残るものの達成感に満ちていて

「あいつら、入部してまだ2ヶ月だぜ？それだけ気持ち入れて臨めたってことは、ちゃんとお前の想いが伝わってるってことだろ。その結果が準優勝だ。悪くねえよ」

「霧野、灰崎ー!!」

観覧席の1番前
身を乗り出して叫んだのは水神矢だった

他の部員達も次々に想いを叫ぶ

「準優勝、おめでとう！」

「よくやった！」

「お疲れ様ー！」

霧野は涙を拭うと精一杯笑った