問題児が2年生になった件について【星章学園】 (ページ6)

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05. 体育祭マジックは起こるのでしょうかページ6

体育祭当日
実行委員の面々は忙しく働いていた

勿論霧野もその1人だったが何処か気持ちは上の空

それもそのはず
先日水神矢から告白されたばかりなのだ

昔から異性から好意を寄せられることが
多いと自覚はしていたが
こうして想いを伝えられることには慣れていない

「A！団対抗リレー、絶対勝ってきてね！」

「期待してるから！」

「任せといて。1位でバトン渡してみせるから」

友人とハイタッチを交わして
最後の種目である団対抗男女混合リレーに向かう

星章学園の体育祭は縦クラスで団を結成する為
各クラスから男女1名ずつがリレーに出場する

彼女のクラスの代表は勿論霧野と灰崎だ

「霧野」

トップバッターである彼女がアップをしていると
灰崎が近寄ってきた

彼は自らのハチマキを取ると
霧野のハチマキの結び目に手をかける

あっという間に解いた灰崎はそのハチマキ奪い
代わりに自分のハチマキを手渡した

「1位でバトン持ってこなかったらぶっ飛ばす」

「…分かってるよ、ばーか」

霧野は灰崎のハチマキを手早く巻くと
また後で、とその場を去る

まるで恥ずかしさを隠すかのように足早に

灰崎の頬が赤く染まっていることなんて
知る由もなかった

スタートラインに立つと
自分の名前を呼ぶ声援が一層大きくなる

「霧野！」

聞き慣れた声に顔を上げると
他の団の代表である水神矢が小さく手を振った

頑張れよ、という無声音の声援に笑顔で応える

しかし彼女の心は決まっていた

このリレーが終わったら
自分の想いを伝えることを

"貴方とは付き合えない"と告げることを

ハチマキに触れてスタートの構えを取る

「On your mark... get set... go!」

風を切る音と声援が彼女を心地良く刺激する

インコースの選手を次々に抜いて
自分を待つ灰崎の元へと一直線に駆け抜けて

「霧野ぉ!!」

今年もお揃いのポニーテール

灰崎は無邪気な表情で彼女の名前を呼んだ

「灰崎っ！」

手にバトンを押し込むと
彼は振り返ること無く走っていく

他団と圧倒的な差をつけてバトンを渡した灰崎が
トラックの反対側から彼女を見つけた

そしてお互いに得意げな笑顔を向けるのだった

「…あれ」

この胸の高鳴りの正体が何なのか
彼女はまだ知らずに居る