11. 秘密 ページ12
瞳子先生に手当てを受けた私は
しばらく休んでいるように言われてしまった
ここまで肩を貸してくれた吉良も
何故か巻き添えを食らってしまい
涼しい部屋に2人きり
合宿を通して少し吉良のことが分かってきたような
そんな気がしなくもないけれど
やはり2人きりというのは気まずいもので
先程から沈黙が続いている
「…なあ、お前何で陸上辞めたんだ？凄い選手だったって、タツヤから聞いた。才能あるんだったら辞める必要無いだろ」
沈黙を破ったのは吉良の方だった
よりによって答えにくい話題を投げかけられ
言葉が詰まる
「悪ぃ、言いたくないなら…」
「別に隠してる事じゃないし、気になるなら話す」
中学生記録を更新したこと
顧問に贔屓されていたこと
それが原因で部員から嫌がらせを受けていたこと
私が話している間
吉良は表情ひとつ動かさずに耳を傾けた
「私は陸上から逃げた。跳べないことが悔しくて、自分で自分を傷付けたの」
左脚の靴下を脱ぐと幾つもの傷跡が露わになる
何度も何度も刃物で傷付けた
誰にも言えない秘密の跡が
未だ痛々しい様子で残っている
「…痛むか？」
「全然。もう治ってきたし」
「傷の話じゃねえ。心の話だ」
予想外の質問だった
気を遣ってくれているのか
それともこれが素なのかはよく分からないけれど
「お前自身を傷付ける必要は無いだろ。周りから理不尽な扱いされて傷付いてんのに、自分でも傷付けたら誰がお前の身体を守ってやるんだよ。身体にとっちゃそれこそ理不尽だろうが」
至極正論だと思った
飄々とした表情で紡ぎ出す言葉は
何故か嫌味なく心に染み込んでいく
「お前は偶然にもサッカー部に入った。これからはフィールドで跳べばいい。跳躍力は誰にも負けない武器になる。フィールドは違うかもしれないが、積み重ねてきた努力が報われないことなんてあるわけないだろ」
まるで傷跡を確認するかのように
吉良の手が私の足首に触れる
その手つきが嫌に優しくて
私は何も言えなくなってしまった
続く (更新停止中)
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しろ(プロフ) - いづうさん» ありがとうございます嬉しいです……！ (2019年2月25日 19時) (
レス) id: ce9889e8a9 (このIDを非表示/違反報告)
いづう(プロフ) - 興味をそそる書き方にもう敬服しまくりです！！文面が洗練されてて読みやすかったです！つい一気に読んでしまいました…。ガンバレ夢主ちゃん！吉良を見返したれ！ (2019年2月24日 22時) (レス) id: a4beff7793 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しろ | 作成日時：2019年2月20日 18時
