EPISODE2 - 110 ページ4
レオナ.side
いつも通りの午後。生徒たちが真剣に授業を受けている中、静かな場所で1人、睡眠をする。
だが、今日は少しだけ違う。
(…マヌケづらだな。)
人の腕を枕にしながら、スースーと寝息を立てる少女。相当、寝不足だったのかぐっすりと眠っている。
普段の警戒心の強い彼女がこんなに隙を見せるなんて珍しい。これだけを見れば、ただの女の子。
しかし、彼女の職業はあまりいいものでは無い。【何でも屋】と関わっている時点で良くないことをしているのは分かっていたが、実際に目の当たりにするとなんとも言えない気持ちになった。
(こいつは一体、何を隠してるんだ…)
一瞬だけ見えた彼女の過去。悲しみと悔しさでどうにかなってしまいそうだった。そんな気持ちを抱えて、彼女は今まで生きてきたのだろうか。
「……A。」
小さな声で名前を呼び、頬を撫でる。彼女は何も反応しないが、心做しか安心したような表情をしているように見える。
守りたい。
彼女の過去を聞くのは簡単だ。聞けば答えてくれるだろう。
でも、それで彼女の顔が曇るのは嫌だ。彼女が悲しむくらいなら、聞かないというのも1つの選択肢だと思う。
(気にする必要もないな…)
昔に何があったのか、家族はどんな人なのか。それは、今の彼女に関係ない。だから、これ以上言及する必要はないだろう。
それよりも気になるのは…
「俺がすごい、か……」
Aの言葉に心がザワザワしている。
理論的な考えの彼女が感情的なことを言うなんて思ってもみなかった。意外と言うよりも、有り得ない。
認めたくはないが、Aは俺よりも強い。本気と言っても遊びだ。戦闘の経験値や場数はAの方が多い、その差は簡単に埋まるものじゃない。
お世辞の言葉なら飽きるほど聞いてきた。チェカの野郎もうるせぇとしか思わないのに……
「何が違うんだろうな…」
自分がすごいのは自覚してる。だが、Aの言葉は何か違った。ストンと心に落ちてくるような…
気づいた時には口角が上がり、彼女の顔を見つめていた。すぐに折れていましそうな細い腕に尻尾を巻き付けて、自分の感情を考察する。
今まで感じたことのない感覚。世の中ではこの気持ちをなんというのだろうか。
「あぁ…そうか。」
この気持ちはきっと___________________________
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作者名：すずは | 作成日時：2022年6月25日 19時
