【MHA】不老不死は恋をする。 (ページ27)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:29,965 hit

第26話記憶ページ27

.

家(うち)の窓。そこから見える青い空はいつもとは雰囲気が違っていて、雲ひとつと見当たらない。そして何処か懐かしく感じる。
こんな快晴の下で、私の父「オールマイト」は今日も誰かを救っている。

明け方に敵(ヴィラン)が現れたという通報があり、その直後にはもう父はコスチュームを着て家を出た。家を出る直前に、卵焼きか目玉焼きがいいかを聞くと父は目玉焼きと言うので、今日は目玉焼きを作る準備をして彼を待つ。

そうして、そろそろ帰ってくる時間のはずだ。なのにまだ来ない。と思っていたら丁度よく家のインターフォンが鳴った。けど父はいつもインターフォンは押さない。だから違う人だとすぐに判断できた。モニターを見てみると、それは、父のサイドキックであるサー・ナイトアイだった。彼は青ざめた顔に汗を流していた。

急いで玄関のドアを開ける。すると勢いよくサーが私の肩を掴み、食い気味に訴えかける。
「詳しい話は移動中にする！急いで車に乗るんだ！！」
父に、なにかあったのだ。それはすぐに察しがついた。私は台所に並べただけのフライパンと解凍中のベーコンもそのままにして携帯と財布を手にとった。

街を駆け抜ける車内で、サーはしっかりと何が起こったのか説明してくれた。明け方の通報の敵が強すぎたらしい。父はその敵の攻撃を受けて病院に送られたという。大きな怪我で、意識を失ってしまった…と。

話を聞きながら、私の中で何かがぴったりとはまった。今日が〝あの日〟なのだろう、そう感じた。私は小学5年。時期も合う。つまり今回の事件は世間に公表されない。オールマイトがオール・フォー・・ワンと初めて戦った日だから。
サーの車の助手席に座りながら、私はただ祈ることしかできなかった。

病院につくと2人してバタバタと案内された病室に向かった。しかしそこにはしわくちゃに捲られた布団しかなくて、来たのとは反対の廊下からグラントリノの声が聞こえる。すぐに声を追いかけた。

「俊典…」
グラントリノと父は同じ病衣を着ていて、グラントリノと並び父を見守るようにして雄英高校の根津校長やリカバリーガールもそこにいた。父は壁に縋りながらもゆっくりと病室から遠ざかろうとしている。包帯とガーゼに汚れた彼はとてもじゃないが「平和の象徴」とは言い難い。

そんな彼に、サーが何かを訴えている。だけどその声は私の耳には届かない、何も聞こえなかった。
指先の感覚も消えていた。