【MHA】不老不死は恋をする。 (ページ18)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:29,966 hit

第17話自覚ページ18

.

「なっ、」
突然だれのものかもわからない手に掴まれて反射的に振り払う。
だけど
「八木」

そう言ったのは轟君だった。

＊＊＊

「珈琲飲むか」
「…ありがと」

ジャージにTシャツという完全にオフの格好のまま走り出していたことに気がついたのは、轟君が私に帰るように提案した時だった。
こんな時に限ってスーツやらオシャレなスカートやらを着飾った人ばかりが目について恥ずかしくなる。轟君の提案通り帰ろうとしたとき「俺でよければ相談のるぞ」と言った彼の声を断れなかったのは、1人きりだとかっちゃんのことしか考えられないと思ったからだ。

「で、なにがあった？」

単刀直入。彼の素敵なところはこういうところだなと改めて思う。学生時代から変わらぬぶっきらぼうさに力が抜けた。

雄英のみんなとはあの3年間で随分と距離が縮まったように思う。その中でも特に彼、轟君。自分が思っていた以上に会話をしたし、よくお昼も一緒に食べた。それに、彼の家庭との接点も沢山あった。親友に1番近い存在は、轟君だと想える。
だから、私の口は自然と開いたのだ。

「実は…」
それから私はついさっきの出来事を思い出しながらなんとかまとめて説明した。
悩みがあっていつものようにかっちゃんの家にお邪魔したこと。それが父に関することだったこと。だからこそかっちゃんにさえ上手く相談できなくて、咄嗟に別の話(・・・)で誤魔化したこと。…そこからは勝手にダレカに話したら悪い気がして少し濁した。

「…かっちゃんのこと、知ってるつもりだったのに、全然知らなかった。どれくらい隠してたんだろ…なんで気づけなかったんだろ…って、私が呑気に過ごしてた時間にどんだけ悩んでたんだろうなって思ったら、なんか悔しくて…」

コーヒーカップの中で揺れる水面に歪む私の顔。
突然のことが重なった衝撃が理由なのか、とにかく私の頭の中はごちゃごちゃだった。

それとは裏腹に轟君は冷静で。
「よく分からんが、そろそろ認めたらいいんじゃないか」

「好きなんだろ、爆豪が」

ふと目を合わせる。彼は普段の顔で普段のトーンで普段と同じように私と話をしている。

───その時、私の中で絡まっていた糸がすっきり綺麗にほどけた。

「………や、やっぱ、そーゆー…こと……？」