【MHA】不老不死は恋をする。 (ページ15)

今日:4 hit、昨日:5 hit、合計:29,972 hit

第14話私ページ15

.

彼は、憧れて泣いて怒って全力でここまで来た。
だけど私は？
「2回も20年生きといて結局このザマよ!だけどかっちゃんだって泣きべそかいて私に頼ったことあるくせに!」

そうだよ。かっちゃんの言う通りだとも。泣いて悔しがって自信を持てるような9年なんて、2回とも送れなかった。
だけど無駄なんかじゃない。いつものかっちゃんなら私の人生を馬鹿にするような言葉は言わない。今の私とかっちゃんは思ってもないことを言い合っているのだ。

果たしてどちらが先に我に返ったのか。このとき私は、私が先だと思ったのだ。
だけど違った。

「────お前だよ」
突然、息を吐いた彼がそう言った。つられて私の怒りの熱も少しだけ下がって、言葉が全部どこかへ吹っ飛ぶ。

「何が私なのか、さっぱり分かんない」
そう問いかけると、彼は「あﾞあﾞめんどくせえほんとにこいつ」と唸って、それとら打って変わって脱力して胡座をかきなおす彼に私は問いかけた。呆れたようにまた息を吐いてから、かっちゃんは私の目を見る。そして、言うのだ。

「だから、好きなヤツ、お前だ」

「──は？」
謎の発言から数秒。やっと出てきた声はそんな間抜けなものだった。…なんの話してんだろうこの人。そう思った。

だけどこちら一点を見つめる彼の耳が林檎のようになっているから、察さざるをえない状況に追い込まれる。嫌でも意味を理解してしまった。

途端に、脚が触れるか触れないかの距離でソファーの上にて向かい合っている状況が一気に恥ずかしくなって、私は躓きながらもソファーを離れた。

振り返るとかっちゃんは赤く染まった耳をこちらに向けてそっぽを向いていた。

「…な、なに急に…」
行き場のない手を、今着ている、彼の家に常備されている私専用のTシャツの裾に当ててクシャッと掴む。手汗が止まらない。

「…」
そっぽを向くかっちゃんは黙って目を逸らしたまんま動く様子もない。恥ずかしさを噛み殺しているようにも見えた。恥ずかしさを噛み殺したいのはこっちだぞ。なんなんだこいつ。

「へ、へんな冗談やめてよ」
そう言うと、彼はバッとこちらを見た。その眉間にはシワが寄っている。

「っざけんじゃねえこんな冗談言わねえわ」
「し、信じらんない！」
怒鳴られた私は再びヤケになって怒鳴り返した。するとかっちゃんはピクっと眉をビクつかせて立ち上がる。そしてどしどしとこちらへ寄ってきた。

もちろん私は逃げる。ほぼ反射的に。

「逃げんな!!」
「や、む、むりっ」