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君が子供に懐かれる理由 ページ32

研磨 side



.



「研磨……ごめん……」


「…後でちゃんと行くからね」



散歩から帰ってきたAの後ろには、黒っぽい服を着た6歳くらいの男の子。

最近、Aは息抜きに公園へ散歩に行っている。

その際、高確率で子供に懐かれ、そのまま家まで連れてきてしまうのだ。

……見方によっては誘拐に見えなくもない。

勝手に家までついてくることのほか、もう一つ問題がある。



「……腹と首あたりに痣があんだよなぁ…」


「…虐待?」


「可能性が高いっつーだけね」



ネグレクトや虐待の可能性が高い子供。

そんな子供たちによく懐かれる。

チャーハンを作り、食べさせてるんだけど…



「この食への執着心もなぁ……」


「…後で拭かなきゃね」



ポロポロとこぼし、とにかくご飯を食べようと必死だ。



「ねーちゃん!!この人だれ!!?」


「私の恋人だ。大切な人」


「へー……キンパツだな!!」


「ふかぁ〜い事情があるんだ。ほっとけ」


「…そんなに深くもないよ」



前に、なんでこんなに懐かれるのか聞いた。

別に何をしたわけでもなく、一人で遊んでいるところを話しかけ、一緒に遊んだり話を聞いたりしているだけらしい。

その時に自分の生い立ちについてよく話すそうだから、多分それが原因。



「童。お前は何があったかこの兄ちゃんに聞かせてやれ!!」


「えー、…」


「僕はお母さんにいらないって言われました!!

お父さんが一人で育ててくれたけど、お父さんもさいきん死んじゃって、お母さんと今住んでる。

……だけど、ほぼ何も食べさせてくれないんだ」


「よーし、そんじゃ児童相談所行くぞ!!」


「おー!!!…なにそれ??」


「…おれも行く」



Aは、深く関わらない子供を『童』と呼ぶ。

ちゃんと関わってしまうと、感化されて泣いてしまうかもしれないから、と言っていた。


もう何度も行っているから、児童相談所の常連になっている。

また貴方達ですか、と言われつつも、話はしっかり聞いてくれるしその後の対応もしっかりしている。



「今月これで何回目ですか…」


「六回目ですね」


「来すぎです。…ですが、貴方のおかげで救える命があります。ありがとうございます」


「私も趣味みたいなもんなんで」



あの人達は、Aのことを知らない。

だから助ける理由がわからない。

けど、おれはそれを知ってるから、少しだけ嬉しかった。

父と母の歪んだ関係の間で育った、死にたがりの子供のことを知っているから。

プロポーズ。→←趣味。



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海石榴《ツバキ》(プロフ) - 今更感すごいですが、完結しましたね。お疲れ様でした!今日読んで今日ハマって今日読み終わりました!とても面白かったです! (2019年12月23日 23時) (レス) id: 906a0c9fbd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:スアール | 作成日時:2019年1月7日 11時

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