swallow's cat 6

168,無理難題 ページ7

〜回想〜




あ「どうしたの？」

樹「ごめん、ちょっと聞きたいことがあって…」




松山に来る前、私は樹理くんから呼び出された。




樹「…Aさ、好きな人出来た？」

あ「えっ…」




何を尋ねられるのかと思いきや、
それは本当に驚きの質問をされた。




好きな人＿＿＿




あ「す、好きってその…恋愛的な方、かな？」

樹「うん」

あ「んー…」

樹「先輩たちが、この前噂してたから…」




"俺の彼女になってくれへんかな？"




そう聞かれて何故か最初に頭に
思い浮かんだのは…




あ「…いや、無いな。ないない」

樹「えっ？」




何考えてんだ私…そんな訳ないだろ。




告白されたからって、浮かれてるんじゃない。




あ「居ない、かな…」

樹「…」




あいつにはきっと、もっといい人が
見つかるはずだ。




だから…私があいつを想うことなんて＿＿




…




あ「！！」

樹「嘘つき」

あ「え…樹理、くん？」




すると突然、樹理くんが私を抱き寄せてきた。




一体何なんだ？




樹「何で…正直に言ってくれないの？」

あ「あ、あの、何言って…」

樹「俺は、Aの事が好きなのに…」




彼は少し深刻そうな顔をして、
抱きしめる力を強くしていく。




今日は何だか様子がおかしい。




樹「あの二人のどっちかが好きなの？」

あ「まさか…ただの仲良しだよ」

樹「…やっぱり」

あ「え？」

樹「さっきずっと見てたけど、
そんな感じでは無いなーと思って」

あ「…？」




噂になってたって言ったけど…
それってまさか、あの事かな？




…まじですか。




樹「A？」

あ「は、はい」

樹「こんな事言うのもどうかとは思うけど…もっとはっきりしてほしい」

あ「は、っきり…？」

樹「本当は誰が好きなのか、ってことだよ」




"じゃないと俺…見てて辛いから"




その言葉が、私の胸にぐさりと刺さった。




本当に、好きな人＿＿＿＿




樹「！、っごめん。言い過ぎたね…」

あ「…樹理くん？」

樹「でも、出来れば早めに答えを出してくれないかな？」

あ「……私は、」

樹「俺も、一応Aのこと好きな一人だから」




〜回想 end〜




あ「…好きな、人」




今まで色んな選手と接してきた私にとって、
そのお願いは正直難しいものだった。




本当のってなに？好きになるってなに？




あ「わかんないよ…私」




猫が人のその感情を理解するなんて…
出来るのかな？

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