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「……そう、なんですね」
今僕は自然と笑えているだろうか。
「おめでとうございます!てか、伊沢さんとお付き合いされてたんですね。早く教えて下さいよ〜!」
適当に並べた言葉と口に運ぶパンケーキ
目の前の彼女はごめんねと笑う。
「山本くん私と結構話すでしょ?なんか弟が出来たみたいで嬉しくてさ〜!皆よりも先に伝えたかったんだよね」
そう言った彼女の左手の薬指には指輪が光っていた。気が付かなかったいや、気がつけなかった。
こんなに素敵な人なんだ、相手がいないわけなかったんだ。
そこから軽く雑談をしたけど、どんな話だったのか残ったパンケーキがどんな味だったのか覚えてない。
カフェから出た後適当な理由をつけてその場で彼女と別れた。
遠回りでオフィスに戻ろうと適当に歩いた。
失恋したのに自然と涙は出なかった。
呆気なかったな…そんな事を思いながらジャケットのポケットに手を突っ込むと指先に何かが触れた。
なんだろうとポケットから取り出すとあの日Aさんに貰ったレモン味のキャンディ。
あの日食べることも出来なくて適当にポケットに入れたんだっけ。
少し考えてから僕は包み紙を開けて黄色のキャンディを口の中に放り込んだ。
口の中に広がる甘酸っぱさ、彼女への思いを断ち切るように僕はキャンディを噛み砕いた。
頬が濡れたような気がした
これはキャンディが酸っぱいせいだ
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作者名:ヨル | 作成日時:2020年8月15日 18時