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NO side
Aはあの後保健室へ行き、処置をした。
そして兄の優希にも連絡が行ったようですぐに飛んできた。
「っ…！」
優希が泣きそうに顔を歪めた。
ゆっくりとAの前に来て、頬に触れる。
「…ごめん。」
「…謝らないでいいから。」
「……」
部屋にはすすり泣く声と苦しそうな表情。
それを少し後ろから見守る教師。
この状態の二人に声を掛けられないのだろう。
家路を歩いている二人の間に沈黙が流れる。
話すネタがないわけではない。
怪我を負いながらもいつも通りの無表情を浮かべるAに少し、恐怖を覚えている。
なんで、抵抗しなかった。
なんで、辛い顔をしないの。
それだけが優希の思考を満たしていた。
「…お兄ちゃん。」
「なに！？」
思わず、声が裏返った。
「…怒ってる…？」
「…無理したことに怒ってる。」
少し頬を膨らませる。
リスのようだ。
「抵抗したらよかったのに、殴られそうになったら逃げたらいいのに、それをしなかったことに怒ってる。」
「…ごめん。」
またAが謝ると柔らかく微笑む優希。
「良いよ、もう帰ろ。」
半歩前を行く優希。
慌ててそれについていくA。
空はとっくにオレンジ色に染まっていた。
「…お兄ちゃん。」
「なに？」
「僕、もっと皆と仲良くなれるかな。」
「…皆？」
皆、が誰を指すのか分からず首をかしげる優希。
するとAは恥ずかしそうに言う。
「…クラスの子、と、か、すとぷりの皆…」
最後になるにつれて言葉が小さくなっていった。
Aにとって仲良くなりたい、なんて九十九比奈以来のこと。
優希は目をパチパチと瞬くと笑いをこらえるために口に手を当てる。
しかしプルプルと震え、こらえきれていない。
それを見たAはさっきまで下げていた眉を少し上げ怒る。
「なんで笑ってるの…！」
「だって、最初会ったときあんなに無関心だったAが、仲良くしたいって自分から！成長したね…！」
「だ、だって！」
帰り道には二つの影。
楽しそうな声一つと少し怒っている声が一つ。
ｶｼｬ
「…？」
「どうしたの？急に振り返って。」
「…なんにもない。」
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作者ホームページ：無し 作成日時：2021年10月31日 16時
