義兄が配信者だった件。 (ページ48)

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池田先生からの罵詈雑言を聞き流すA。
なんでそんなに平気そうなの？
なんで抵抗しなかったの？
なんで…笑ってるの？
こんな状況でも笑みを浮かべているA。
いつもと違うAに恐怖を覚える。

「…比奈…？」

私を見ながら微笑んだA。
ごめん。
今のAは…

「怖い…」

小声でつぶやいたはずだったけどAには聞こえてしまった。
悲しそうに眉を下げてる。
駄目だ、と思って口を開こうとしてもパクパク、と動くだけで声を出せない。

「ごめんね。」

違う。
そんな顔させたいわけじゃない。
やめて。
謝らないでよ。
ねえ、教えてよ。
辛いなら話してよ。
苦しいなら泣いてよ。

「…比奈ちゃん？」

彩ちゃんに声を掛けられて現実に戻った。
パッと顔を上げていつも通りの笑みを浮かべる。

「どうしたの、彩ちゃん。怖くなっちゃった？」

「こ、怖かったけど、Aくん大丈夫かなって…」

「…大丈夫！Aだもん。大丈夫！大丈夫…」

自分自身に言い聞かせるように大丈夫、と繰り返した。
彩ちゃんは私の様子に気づいたのか何も言わずに傍にいてくれた。

「…そうだね、Aくんだもんね。うん、きっと大丈夫。」

「バカA…抵抗できただろうが…」

「うんうん…」

「昔ヤンキーに絡まれたとき殴り返しただろ…」

「うんうん…え？」

彩ちゃんが驚いた顔で私を見る。
目を丸くして口をぽかんと開けている。

「…殴り返したの…？」

「うん。」

あのAが殴るなんて思えないよね。
私もそうだった。
でも昭和かよって感じのヤンキーに絡まれたんだよね。
と言っても私が煽っちゃっただけでA巻き込まれただけだけど。

「…意外…」

「あはは。」

彩ちゃんには勘違いしたままでいてもらいましょ。
…あとで好きなだけデコピン喰らうから、…早く戻ってこい、バカ。

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