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「あー…」
さとみはもう編集する必要もないのにパソコンの向かいの椅子に座ってうめいた。
自分がAにしたことが今になって蘇ってくるのだ。
防音室だからさとみの声は外に届かないしAの声も聞こえない。
だからさとみはこの部屋に閉じこもっているのだ。
「謝らないといけないのは分かってるんだけどな」
さとみはA本人に聞こえないのを良いことに頭に浮かんだ言葉を口に出してみた。
その方が考えがまとまるような気がした。
さとみにしては珍しく、謝るのを先延ばしにしてウジウジしているのは理由がある。
Aに約束を、一緒に死ぬ計画を白紙に戻されるのが怖いのだ。
早めに謝らないともっと状況が悪化するのは分かっていたがそれでも勇気が出なかった。
「はぁーあ。俺ってこんなに弱虫だったっけ」
さとみが自嘲の笑いと同時に出てきた言葉は救いようのないほどテンプレで。
それがますます弱気に拍車をかける。
そんなことを1人でしていると元編集部屋のドアが控えめに叩かれた。
『あのー…?』
考えていた張本人の声が聞こえてさとみはばっと音がしそうな勢いで後ろを振り向いた。
「大丈夫」
さとみは声だけは冷静を保って椅子から降りてドアを開けた。
「さっきはお前にあんなことしてごめん」
Aと目は合わせられず、下を向いたままだったがさとみは謝った。
『本当だよ。反省しとけ。てかそんな事よりすとぷり全員入ってきたんだけど?』
さとみがは、と耳を澄ますとリビングからころんとるぅとと莉犬がワチャワチャ騒いでいる声と酔っ払っているらしいななもり。とジェルの声が。
「え、え、え?何お前あいつらのこと招き入れた?」
『いや、リビングでひなもかみみと戯れてたらドアが開いたから見に行ったら合鍵手にしたななもりさん先頭にみんな入ってきた』
「あいつらマジふざけんなよ」
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作者名:める | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/n15a76543b1
作成日時:2024年1月11日 7時