いのちの咆哮が聞こえますか5-5 ページ31
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アナスタシア様が璃月港の入口近くで騒ぎを起こしたあの日の夜、行秋と一緒に彼女を探し回ったが見つからなかったところに、月海亭の秘書の甘雨殿と夜叉の魈殿が飛雲商会にやってきた。
彼女は酷く衰弱していて、話によれぱあのランティーク侯爵とウォンモール伯爵に決着をつけたらしい。──恐ろしかったのは、侯爵が従えていたファデュイ達が私と一緒に北国銀行に勤めていた同僚達も捕まえられたという事実だった。
公子様の立場が璃月の中で揺らいでいることを他所に、行秋は今回の事件が私の知人も関係したことを知って大騒ぎしていた。
(一番辛いのはアナスタシア様なのに…私まで落ち込んでしまってはダメね。しっかりしなくちゃ。)
彼女に対して出来ること、手伝ってあげること…何をするか悩んでいる私に行秋はそっと抱きしめた。
「…どうしたの、行秋。」
「君のことだから、自分よりアナスタシアさんを心配しなくちゃって思ってるんじゃないかって。」
「…あ。」
「当たりみたいだね?」
家族に関して悩んだり、仕事で不安なことがあったら真っ先に浮かぶ負の感情…。自分の行き過ぎた感情のあまり、他人を優先し自分を傷つけるような言動を取ったりすることも稀にある。
彼女はそれを改めて実感させて、私に色んなことを思い出せた。
(私はそんな言動はしてこなかったつもりだったけど、行秋にとって今の自分がそう見えたってこと?)
「…行秋、私前より明るくなれてるかしら。」
「ああ…。僕は今のアステリアも前のアステリアも好きだけどね。」
「ふふっ…そう言ってくれる人がいるから、私は今生きてたいって思うのかも。」
(彼女にはまだそんな余裕は持てないけれど、心の奥底で『生きたい』っていのちの咆哮が聞こえる時過去の自分を乗り越えられるのかもしれない。)
私がこの璃月という素晴らしい国で色んなことを学んで、スネージナヤという冬国から翼を生やし他の国で羽ばたいた時に見た光景たち。
父や母との別れを通して、今まで避けられていたと思っていた姉と兄と文通出来たのも、あの試練を潜り抜けていった結末なのかもしれない。
「ねぇ、行秋。」
「…どうしたんだ?」
「今日も…月が綺麗だね!」
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天野アリサ(プロフ) - るさん» コメントありがとうございます…!前作から見てくださったのですね…!本当に感謝です…!今作も読んで楽しんで頂けたら幸いです! (2022年11月17日 17時) (レス) @page12 id: 08985c907f (このIDを非表示/違反報告)
る - 前作から見ていました!今作も面白いものをありがとうございます! (2022年11月16日 19時) (レス) @page7 id: 1c00c5b49c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いるか | 作者ホームページ:
作成日時:2022年11月14日 12時