生きたいと願う声が聞こえますか3-4 ページ18
*****
感情は面倒なもの。生きていれば必ず邪魔と感じてしまう。なのになぜ？
(涙を流すと心が落ち着くのは…何年ぶりだろう。)
「…落ち着いたか？」
「はい…。男爵令嬢、申し訳ございません…。」
「いいのです、話はまだ聞きますか？」
「……はい。お母様とお父様──伯爵と前伯爵夫人はどうなったのですか。」
知ってしまった以上、このまま聞かずになんてできない。私が苦しんでいる間に、何が起こり私が行方不明だという扱いになったのか。そして何より、伯爵と前伯爵夫人の結末を知りたい。
(…こんな風に考えるなんて、私の方が悪女みたい。)
「ウォンモール伯爵は前伯爵夫人と双子を産み、アナスタシア様のことについて『あの子は部屋に閉じこもっており、伯爵の後継者として相応しくない』、また『この子達のどちらかを伯爵の位に継がせる』と言いました。」
「……続けてください。」
「そして何より…双子を産んだ直後に伯爵が大きな事業に取り掛かったらしいのですが、それが上手くいかず今は困難な状況です。それが3年半前起きたことで、これはスネージナヤで大きな記事になっていました。何せそれを見損ねた前伯爵夫人は伯爵の前から姿を消しましたから。…ここまでが、2年前に起こった出来事です。……伯爵令嬢様、このことはご存知ないですよね？」
知っているわけがなかった。4年前から、ずっと閉じ込められていたから。あの邸宅から離れることを許されないのはもちろんのこと、食料も十分に行き届いてなかったから。にしても、前伯爵夫人…。
(…あなたは愛を見つけたといって、結局はお金に噛み付いてただけなんですね。)
「知りませんでした、それで…前伯爵夫人はその双子の女の子の方を連れて行ったのですか？」
「はい、そしてちょうど半年前です。私がファデュイとして男爵家にいた頃、ご令嬢が行方不明だということを一斉に報せました。それも…4年前からだと。伯爵に疑いの目は向けられ、噂によれば憲兵に連れて行かれたと。伯爵には助ける人がいない限り、保釈金も出されずにそのまま牢屋で過ごしているでしょう。」
(助ける人が…いない限りね。)
伯爵は私が侯爵の元にいることを知っているはずだ。なのに、なぜそれを報じたのか。……そういえば、侯爵邸から抜け出す時に客人が見えていた。まさか──いいえ、これはまだ推測にすぎない。
考えたくなかったひとつの可能性。
侯爵の”客人が伯爵だったら”と。
生きたいと願う声が聞こえますか3-5→←生きたいと願う声が聞こえますか3-3
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天野アリサ(プロフ) - るさん» コメントありがとうございます…！前作から見てくださったのですね…！本当に感謝です…！今作も読んで楽しんで頂けたら幸いです！ (2022年11月17日 17時) (
レス) @page12 id: 08985c907f (このIDを非表示/違反報告)
る - 前作から見ていました！今作も面白いものをありがとうございます！ (2022年11月16日 19時) (レス) @page7 id: 1c00c5b49c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いるか | 作者ホームページ：
作成日時：2022年11月14日 12時
