生きたいと願う声が聞こえますか3-1 ページ15
*****
ウォンモール伯爵令嬢には二つの武器がある。それは誰もが振り向く美人であるということと、平民出身の貴族と思わせないような”幾多の仮面”があること。
仮面とは貴族には必要不可欠なもの。仮面の下に潜ませている言葉のナイフをかわす彼女は、まさに唯一無二の強みだった。そして多くの仮面を持っている彼女は、時には恐ろしい一面見せた。
貴族社会で生き残るためには、彼女がもつ天性の顔以外で能力を見せつけなければならない。──けど、今日の伯爵令嬢様はそんな箇所が見受けられなかった。
(…行方不明の間にきっと何かがあったのね。)
私は飛雲商会に帰ると、行秋が私にべったりくっついてきた。
「ちょ、ちょっと…!行秋、離れて。」
「…どうしたんだよ、いつもは喜んでくるのに。」
「……コホンッ。使用人の方たちが見てますので。」
「そんな恥ずかしいことか?」
「あ、当たり前でしょう。……ねぇ、行秋。もしも、私があなたの目の前からいなくなったとしたら、あなたはどうするの?」
「…?何を言ってるんだ、うん…そうだな。そりゃもちろん、すぐに行方不明ということを知らせて探すのを協力させるだろう。」
「やっぱり、そうよね…。」
(間違いない…彼女の家族はきっと……。)
ウォンモール伯爵は物事を正確に捉えることが出来なかった。それになにより、先代の伯爵の方が優秀だと言う声もちらほら聞く。
そして、ウォンモール伯爵の後妻である夫人と出会ってからは、更にそれが悪化したといった。出来の悪い伯爵と伯爵夫人の間に育てられた彼女は、その二人に似ることが無く優秀だったとよく噂で耳にしていた。
「…何やら考えてるけど、どうしたんだ?」
「…え?ううん、ただ……。」
「ただ?」
「私と境遇が似てるけど、彼女はもっと…。」
「…?彼女って誰だ?」
「ううん、なんでもないわ。……というより、早く離して。」
「今日のアステリア、冷たいな。」
彼女が私と同じような思いをしていたとしても、いつかあなたにも…愛する人が見つかりますように。
(…ウォンモール伯爵、あなたは何故今頃になって彼女を探し始めたのですか?)
生きたいと願う声が聞こえますか3-2→←生きたいと願う声が聞こえますか3-0
121人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天野アリサ(プロフ) - るさん» コメントありがとうございます…!前作から見てくださったのですね…!本当に感謝です…!今作も読んで楽しんで頂けたら幸いです! (2022年11月17日 17時) (レス) @page12 id: 08985c907f (このIDを非表示/違反報告)
る - 前作から見ていました!今作も面白いものをありがとうございます! (2022年11月16日 19時) (レス) @page7 id: 1c00c5b49c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いるか | 作者ホームページ:
作成日時:2022年11月14日 12時