事実〜女主視点〜 ページ49
「………」
思案顔で何かを考えるろん先輩
全てを話したが、いったいどう思ったんだろう…
『……あ、あの』
尚も黙り続けているので声をかけると
「ろんー？入るよー」
そう言ってひと里先輩が入ってきた
その後ろに空くんもいた
空くんを確認した瞬間ろん先輩の雰囲気が変わった
…もしかして空くんを疑ってる…？
ひと里先輩の目が怖い
しまった
上手く私の気持ちを話せていなかったかもしれない
私は空くんを疑ったりはしないでほしかったのに…
私の説明不足だった…
尚も冷たい態度をとるろん先輩に、話が通じないと思ったのか
ひと里先輩が私を呼んだ
３人で部屋を出る
ひと里先輩は少し考えてから口を開いた
「柚子ちゃんは空のこと信じてる？」
あんまり直球だったんで一瞬止まってしまったが、答えは決まっている
『はい』
これ以外の答えはない
私は空くんを信じてる…空くんはあんなことはしない
――そんな確信が、ある
そう言うとひと里先輩が私に近づいてきて……
『！！』
思わず目を向いた
そのままひと里先輩は行ってしまう
空くんが怪我を…
私が屋上を出た後そんなことがあったなんて
どうして私はあの時逃げてしまったんだろう
どうして私は何の怪我とかもなくここにいるんだろう
私まで狙われていたなんて…知らなかった
姫歌ちゃんが…
あの時私がいたら…少なくとも空くんが怪我をすることはなかったんだ
『…っ』
悔しい
私が逃げなければ…そう思うと悔しさと情けなさが相まって涙が滲んだ
『…ごめんなさい』
「え、いや…」
『ほんとに…ごめんなさい』
私が突然泣き出したから空くんが困っている
本当は私は泣いちゃいけないのに…
空くんはなにも言わないけど、きっととっても悔しかったに違いない
なのに私が泣くなんて…
少し沈黙が続いた後、空くんがなにか囁いた
『！！…い、いや！そんなの…やだ…！』
「お願いだからさ…」
『でもっ』
まさかそんな提案をされるとは思ってなかった
どうやら空くんの目は本気みたいだし…
―――あぁ、またナノくんに怒られそうだ
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