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大学から喫茶店まで全力で走った。
別に待ち合わせしてるわけでもないのに、本当にあの人がいるかもわからないのに、俺はひたすら走った。
(居ますように、居ますように…)
いちょう並木道に差し掛かる。この黄色い世界を抜ければすぐ店だ。
店に入ったらどこに座ろうかな。
あの人はきっとカウンター席だから、俺もその隣…いや、隣はさすがに変だな。
２，３席空けて座ったら、とりあえずコーヒーを頼もう。
頼んだらおっさんが適当に豆選んで…その隙にあの人に声を…って、
「あっ？」
並木道を抜ける時、店の前にマスターとお姉さんの姿。
「あ、、ちょ、、あーッ、、」
言葉にならない声がマスター達に届く。
「…お。学校終わったんか」
相変わらずの猫背でふふっと笑うその隣に、俺が会いたかった人。
彼女は心配そうに眉を下げた。
「大丈夫…？」
柔らかくて優しい声。
俺の心臓、ただでさえバクバクいってんのにそれだけでもう崩壊寸前で。
「大丈夫っす…」
「そんなに急いでどうしたの？…あ、もしかしてバイトくん？」
「バイト？いや、僕はただの客で…」
「ぷッ、"僕"って…」
隣でマスターが吹きだす。
けど、そんなことはもうどうでもよくて。
俺は早く店に入ろうと扉を開けた。
「あ、じゃあ、またね？」
「えっ？」
キョトンとした俺の顔に、キョトンとした顔で返してきたお姉さん。
「あれ…私変なこと言ったかな」
「いや…もう帰んの？」
突然のことでタメ口を使ってしまった。
ニヤニヤ笑いをこらえるマスター。
くそー…そうならそうと早く言ってくれよ…。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年5月22日 18時
