捨てられない恋【ars K.N】END. (ページ37)

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__"時計台の下、５時…５分前ね"

　なぜ５分前なんだろう。
　何か大きな意味があるのか、ないのか。

　気になりながら入園無料の遊園地に入る。

　翔との思い出が詰まったこの場所…中でも一番忘れられない所に、私は向かっていた。

　時計台のすぐ下。
　私がプロポーズを受けた場所だ。

　約束の時間より少し前に辿り着いてしまった。

　どういうつもりで二宮くんは私をここへ呼び出したんだろう。一体…何を言われるんだろう。
　その時私は…どんな言葉を返せるのだろう。

　頭の中で色々と考えていた…その時、

「……A？」

　こちらに向かってくる、翔の姿。

「どうして…」

　ありえない偶然だった。

「一昨日…かな、智くんから"今すぐ戻ってこい"って連絡があってさ」

　翔は、優しい溜め息を一つこぼした。

「A、不安にさせてごめん」
「不安…だなんて…」
「強がらないで。全部聞いたよ、智くんに」
「え…」

　それは、二宮くんの事も…なのかな.。

「俺が女の人と一緒に居るとこ…見たんだろ？」
「…あ、うん…」
「あれは上司の娘さんだよ」
「娘さん？」
「そう。前から結婚相手にどうだって言われててさ…」
「…」
「いや、でね？断ったんだよ。Aが俺たちを見かけたあの日に」
「そう…だったの…」

　じゃああの時、私は勘違いして、勝手に傷ついて、それで…

「ていうか、Aにプロポーズする前に断るべきだったね。ごめん」
「ううん…私も…ごめんなさい」

　もっと素直に話すべきだった。
　不安を感じたあの時に。

「あ、でも。不安でいったら俺だって」
「…」
「誰に撮ってもらったのか分からない写真とか、男物の傘とか」
「…ごめんなさい」
「謝るってことは、俺が想像してる通りでいいってこと？」
「大野くんに…どこまで聞いたの？」
「あぁもう、それ確定だな…」

　翔は困ったように頭を掻いた。