捨てられない恋【ars K.N】END. (ページ36)

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数日後、私は前よりも少し気持ちが楽になっていた。

　だからってこれは開き直ったわけじゃない。
　二宮くんとの関係には反省しているし、罪悪感でいっぱいだ。

　それに…翔のことも解決はしてない。不安だって消えていない。
　だけど大野くんが、

＿"大丈夫、俺はAの味方だ"

　全てを打ち明けた私にそんな言葉を掛けてくれたからほんの少し、前を向けるようになったんだ。

　ふと棚に目をやると、そこには一枚の写真。
　"ふてくされてる私"に、少し埃がかぶり始めていた。

　これはもう、捨てた方がいい？
　それともまだ…。
　…おかしいな。

　反省しているはずなのに、前を向いたはずなのに、悩む自分がいて、苦しい。

　写真を眺めていると、ポケットの中の携帯が震えた。

　取り出してみるとそれはメールではなく電話の着信で、画面には"二宮くん"と表示されている。

　出るか出ないか迷ったけど、ここで無視したら何も前に進まない。

　私はドクドクと動く胸を手で押さえながらその電話に出た。

『…Aさん？』

　電話に出たものの、すぐに声を出せなかった私に二宮くんは言った。

『出てくれてありがと…』

　久しぶりに聞くその声…罪悪感は増していくばかりだ。

「二宮くん…この間は、」
「あのさ」

　"ごめんなさい"…そう言おうとした私の言葉を二宮くんは強引に遮って、

「今日…あの遊園地に来てくれる？」

　そんな誘いを投げてきた。

「時計台の下、５時…５分前ね」
「…」
「待ってるから」

　こちらの返事も聞かずに切れてしまった電話。
　ふと時計に目をやると時刻はもう１５時を過ぎていて…

「急がなきゃ…」

　悩んでいる時間なんて無かったんだ。