捨てられない恋【ars K.N】END. (ページ34)

今日:20 hit、昨日:10 hit、合計:350,924 hit

＊３４＊ページ34

「俺がAさんに惚れた時…？」
「あぁ」
「…」

　思い出すことよりも先に、カズは鞄から一枚の写真を取り出した。

「惚れた時…」

　ぼそっとそう呟いて、それを眺める。

　どうせAの写真でも眺めているんだろうと、俺もカウンターから身を乗り出して覗き込んだ。けど、

「あ…？お前それ…」

　そこに写っているのはAだけじゃなくて

「翔ちゃん…？」

　幸せそうに見つめ合う二人だった。

「…Aさんがプロポーズを受けた瞬間だよ」
「偶然…か？」
「もちろん。…俺が恋に落ちたのはこの時」

　…ということは、カズがこの店でAと出会った時、すでにもう惚れていたってわけで。

「だったら尚更だろ…」

　俺が言いたいことは一つだ。

「お前が惚れたのは翔ちゃんありきのAだ。その時点でもう負けなんだよ」
「…」
「ちょっとそれ、見せてみ」

　そう言うとカズは黙って写真を差し出して。
　改めて見るその写真に俺は思わず、

「…１００点だな」

　最高得点をつけた。

「分かってんだろ、自分でも」
「なにが…」
「お前にこの表情は引き出せない。翔ちゃんにだけだよ」
「だからもう俺は…」
「アイツはAを寂しい思いになんてさせない」
「…」
「寂しさを埋める必要なんて…」

　一度はあったとしても、これからは

「絶対にない」

　そうだろ…？翔ちゃん。