捨てられない恋【ars K.N】END. (ページ33)

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「そうやってただ待ってるより、連絡くらい入れてみりゃいいじゃねぇか」

　俺のアドバイスにカズはいつもの席から俺をチラ見すると、また視線を手元に戻した。

　相変わらずカメラをいじっているらしい。…Aの事を待ちながら。

「連絡先知ってんだろ？会いたいなら呼べよ」
「…」
「何か連絡できない理由でもあんのか？」

　って聞いてみたけど、本当は毎日毎日この店に来るカズと、ぱったり来なくなったAに俺はなんとなーく…予想はしていた。
　……はずなのに。

「マスター、俺………Aさんと、した」

　実際にカズの告白を聞いた今、俺はまぁまぁ胸を痛めている。

「お前…ハッキリ言うねぇ…」
「襲ったわけじゃないよ」
「…」
「俺の家に来たんだ。Aさんが…」

　淡々とその事について話すカズの目をよく見てみると、以前と少し違う事に気付いた。
　なんていうか…"透明度"が落ちている。

「俺はね…Aさんが寂しい思いしてんなら、それを埋めてあげたい」
「…」
「たとえそれが間違いだとしても、罪だとしても、Aさんと一緒なら何度だって繰り返せるよ」

　…こうして道を踏み外して行くヤツの救い方を俺は知らなかった。

　だけど、だからって。
　黙って見過ごすわけにもいかない。
　だってAは、翔ちゃんは、俺の大切な友人だから…。

「お前は本当にそれでいいのか？」
「…」
「Aに惚れた時の事を思い出してみろ」

　それはお前が初めてAと出会った日。

　いつもは生意気な大学生が大人の女性相手にオドオドして…今思えば、あれが恋に落ちた瞬間だったんだろうな。