捨てられない恋【ars K.N】END. (ページ30)

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翌日、私はまた大野くんの店に来てしまった。なんだか寂しい気分だったからだ。

　…けど。

「え…臨時休業…？」

　残念ながら店に入ることは出来なくて仕方なく、まわれ右。そのまま空を見上げると、雲行きが怪しいことに気が付いて。

(早く傘、返さなきゃ…)

　と、二宮くんを思い出す。
　今日持ってくればよかったかな。家近いし…

＿"あの写真を撮った人は、きっとAのことが好きなんだね"
＿"借りっぱなしは良くないよ"

　トボトボと歩きながら、昨日のことを思い返していた。

　もしかしたら私と同じように、翔も不安を感じたのかもしれない。だって、彼女に家に自分のものじゃない男物の傘があるなんて何かを疑うに決まってる。

　それなのに深く問い詰められなかったのは、私のことを信頼してくれているからなのだろうか…。

「……あ、」

　駅の近くまで辿り着いたとき、見つけてしまったその光景。
　…息が、止まった。

　どうして、さっき笑顔で家を出て行ったあの人が私の知らない女性の隣で笑っているの…？

　どうして、まだこっちにいるの？
　仕事は？アメリカへ戻ったんじゃなかったの…？

　人混みの中に消えていく翔と…その女性。
　頭がくらくらする…と同時に、喉の奥がきゅうっと苦しくなって。

「どうしてっ…」

　ぽつぽつと降り出す雨。
　今の私と同じだ。
　涙が……止まらない。