＊２９＊ ページ29
「それじゃあ、また連絡するよ」
翌朝、玄関先で翔は私の頭を優しく撫でてくれた。
また会えなくなる寂しさと、昨日の"不安"でうまく笑えない私に翔は気付いているのだろうか。
「無理…しないでね」
「いや、無理してでも連絡する。…辛いんだよ？俺だって」
「…」
「きっとすぐ声が聞きたくなる」
「翔…」
やっぱり私が感じていた不安は、気のせいだ。
昨晩の翔への着信が女性からのものだなんて…ネガティブに考え過ぎた。
それに、もし本当に女性からの着信でも別に変な関係なんかじゃないし、翔はそんな事をする人じゃない。
「そういえばさ、」
家を出る直前、思い出したように翔は言った。
「あの写真…良く撮れてるね」
「あの写真？」
「テーブルの上に置いてあったやつ」
「あ…」
……片付けるの忘れてた。
「最近？」
「うん…」
「すごく素敵に写ってる」
「あ、ありがとう…」
「あの写真を撮った人はきっとAの事が好きなんだね」
「…え？」
「まぁ、男か女か知らないけど？」
首を傾げていたずらに言う。なのに私はそれを真剣に受け止めて、
「べ、別に好きじゃないよっ」
二宮くんに代わって、否定した。
「あ、動揺してんな？」
「してないっ」
「ふふ…ごめんごめん。ちょっと意地悪したくなっただけ」
「…」
「もう、怒らないの」
翔は人差し指で私の頬をトントンと軽く突いて、
「じゃあ行くね」
扉を開けた。
「あ、そーだ」
「もう…今度はなにー？」
「それ、早く返しなよ？」
「それ？」
翔の視線を辿ると、そこには二宮くんに借りた傘があった。
「借りっぱなしは良くないよ」
紺色の、どう見ても男性物の傘に、私の頭の中は言い訳を作り出すのでいっぱいだったけど
「またね」
翔がいつもと変わらない笑顔を見せるから
「い…ってらっしゃい…」
私はその場に立ち尽くす事しかできなかったんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1169人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミト
| 作成日時：2017年5月22日 18時
