捨てられない恋【ars K.N】END. (ページ21)

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「最後に撮ったやつでしょう？これ…」

　お気に入りとして見せた写真にAさんは不服そうな声で言った。

「変な顔してる～…」
「どれ。ちょっと見せて」

　何度見たって可愛いもんは可愛い。

　だけどAさんがあまりにも認めてくれないから、俺は少しだけ彼女の方に頭を寄せてカメラのディスプレイ画面を覗き込んだ。

「どこが変なの」
「この口元とか…」
「なんかふてくされてんね？」
「二宮くんがカメラに夢中だったからでしょう？」
「俺はカメラじゃなくてAさんに夢中だったの」
「え？」
「え？」

　Aさんがこちらを向いて、俺もAさんを見つめて。お互いの鼻先がくっつきそうだった。

　あまりにも近すぎるこの距離にAさんはすぐに顔を離すかと思ったけど、

「私に、夢中…？」

　離すどころか、透き通るようなその瞳で俺を見て。そんな彼女に俺は思わず……額を合わせた。

「うん。夢中だよ………」

　その瞬間、俺の鼓動はどんどん速度を上げていく。

「に、二宮くん…？」

　慌てたAさんの手が俺の肩に添えられて、ふと我に返る。

「ごめん、俺いま…」

　キス… しようとしてた。

「大丈夫？二宮くん…」

　これにはAさんも、少し気まずそうな空気を漂わせている。
　俺がキスをしようとしていた事…気付いたかな。

　まぁ、いいや。
　だって今のは…すぐに顔を離さなかったAさんがわるい。