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とある土曜日。学園祭。
大学の入り口まで辿り着いた私は大変なことに気付いてしまった。
「どうしよう、連絡先知らないや…」
交換した覚えは無いけど一応、携帯の連絡先一覧に目を通す。
でも、やっぱりそこに"二宮くん"の文字は無かった。
よくよく考えてみれば私たちはまだ出会って間もない"お客同士"で。
こうして彼の学祭に来ていることに少しだけ違和感を抱いた。だけど、
「Aさんっ…」
それを一瞬で消しちゃうくらいの、
「よかった…会えた！」
無邪気な笑顔。
「連絡先知らなかったよね？会えなかったらどうしようかと思ったよもう…」
そういえば大野くん、「アイツは人たらしだからな」ってこの前言ってた。
だからきっと、今。
まるで昔から知り合いだったみたいに、
「とりあえず、行こっか」
こうして自然と歩き出せるのかな…。
………って、
「あ、あのっ…二宮くん？」
「ん？」
「手…手…」
どうしよう。すごく自然すぎて避けられなかった。
「手がなに？」
「繋がってる…けど…」
「うん。繋いだから」
離してくれる気配はない。
今どきの若い子はこれが普通…？なのかな。
「だってはぐれちゃ大変でしょ」
「あ、うん…そうだね」
そっか…そういう理由で手を繋ぐ事もあるものなんだ。あ、でも。
「ねぇ二宮くん、連絡先交換しておこう？そしたらはぐれた時も…」
「やだ」
「え？」
「連絡先は最後でいい」
「最後って…」
帰る時ってこと？かな…。
「今交換したら、はぐれてもオッケーになっちゃうじゃん」
「ん…ん？」
「はぐれちゃダメだから手繋いでんのに」
「…？」
「はぁ」
残念そうな溜め息。二宮くんは大きく肩を落すと、
「…んかん。」
ぼそっと、声をこぼした。
「え？なに…？」
聞こえなかった…。
「何でもない！とにかく連絡先はあとででいーの」
二宮くん、なんて言ったんだろう…。
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作者名：ミト
| 作成日時：2017年5月22日 18時
