捨てられない恋【ars K.N】END. (ページ12)

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Aと俺は中学の時からの親友だった。

　途中、高２の夏くらいかな、Aに淡い恋心を抱いたことだってあったよ。
　でも言わなかった。いや、言えなかった。

　だって、俺のもう一人の親友もAのこと好きだったから。そして二人は…両想いだったから。

　俺の入る隙なんて最初からなくて。
　でもそれでよかった。

　Aが幸せそうに笑ってるなら、それで十分。
　Aの幸せが崩れてしまうような事は極力避けたかったんだ。

　だから……悪いな、カズ。
　警告だけはさせてもらうよ。

＊＊＊＊＊

「もしもし、翔ちゃん？」
『え？え？智くん？』
「気持ち悪ぃなヘラヘラすんなや」
『いやするよ！なんでこんなとこまで掛けてきてんのアナタ』
「なぁ、お前いつ帰ってくんだよ。Aが寂しがってんぞ」
『それ聞くために掛けてきたの？』
「そうだよ、悪いか」
『えぇー…』

　翔ちゃんはしばらく笑ってた。
　きっとくだらねぇとか思ってんだろ。

「なあ、結構真面目に聞いてんだけど」
『ごめんごめん。んー、そっちには来月帰れるかなぁ』
「そうなの？」
『うん。でもすぐ戻んなきゃだけど』
「そっか」
『余裕があったら店に顔出すよ』
「余裕がなくても来い」
『何、そんなに俺に会いたいわけ？』
「とにかく来いったら来い」
『どうしたんだよ智くん…』

　……翔ちゃんはイイ男だ。
　俺が言うと気持ち悪いかもしんねぇけど、とてつもなく顔が良くて、頭が良くて、優しくて…相当モテていた。

「なぁ翔ちゃん、あんまりAのことほったらかしにしちゃダメだよ」
『わかってるって、大丈夫だから』
「わかってねぇよ」
『え？』
「翔ちゃんが惚れた女だよ？翔ちゃんと釣り合う女だよ？」
『釣り合うってそんな言い方…』
「笑い事じゃねぇって…！」

　あれ……なんで俺、こんな必死んなってんだ…？
　軽く警告するつもりだったのに。

『智くん？』
「……翔ちゃんと同じくらい、Aだってモテんだからな…」

　あぁそうか、少しだけ…
　少しだけAに恋してた日のことを思い出してしまったんだ。