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「え…？」
釈迦様が言うには、
本来ならば死者は閻魔大王様の元へ行って天国か地獄かに振り分けられるのだが、
一定以上徳を積むと釈迦様の独断で現世に戻れる制度があるらしい。
「でもね、生き返るって事じゃなくってよ？現世には戻れるんだけど身体は、言っちゃえば幽霊のままってこと。それにAちゃんの姿は君が選んだ唯一の人にしか見えないからね。まあ色々説明することはたくさんあるんだけどとりあえず、どうしたい？」
「Aちゃんは一体誰の所へ戻りたい？」
私はもう死んだ身で、それはもう仕方のないことで。
でももう一度だけ会えるのなら。
どんな形でもいいからもう一度だけ。
拓司の元に……
「美味しい話って裏があるってよく言います。けどなんでもいいから私は拓司に会いたいです。」
死者が戻るなんてご法度だけど神様が許してくださるのなら、今日だけわがままを。
「本当によろしいのですか？部外者が勝手に口を挟みますがこの制度を試した方々はみんな気を病んで冥府に戻ってきます。」
「ちょっと案内人？これは私と対象者間の話よ？」
「ありがとう案内人さん、釈迦様。私大丈夫です。ぜひその制度を利用させてください」
私の何の迷いもない言葉に案内人はそれ以上喋らなかった。
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「じゃあ、説明通りに、決まりだけは絶対破っちゃダメよ？」
そのあと諸々の説明を受けて、書類にサインをした。ペンは羽根のように軽く書きやすかった。
書類の中に『現世に戻る際、逢いたい特定の一名を選びその人のフルネームを記入しなさい。』とありしっかり“伊沢拓司”と書き込んだ。
それ以外には現世に戻った時の状況や決まりがびっしり書いてあった。
・死後の世界の事は絶対に口外してはいけない
・自分が幽霊だと口外しない など。
そしていよいよ現世に戻る。期間は2年。長い方だという。
釈迦様は神妙な面持ちで私の両頬を比にならない大きさの手で包んだ。
「Aちゃん、願い事3つ考えて。」
「え…？」
「後悔のないように。これは選ばれた人だけの制度。わかった？」
釈迦様のさっきの軽快さは何処へやら、真剣に私を心配しているようだった。
「それではこれから相場Aちゃんを現世に飛ばします。」
その合図と共に私は目を閉じた。
・
目を開けると病室で眠る拓司がいた。
本当に戻ってきたんだ。
小さく寝息を立てる拓司を見て私は小さなキスを落とした。
「死んじゃってごめんね」
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作者名：ピーチフラペチーノ | 作成日時：2024年3月11日 18時
