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「順を追って説明させていただきますと、」
早歩きで真っ白な空間を歩いていく案内人さんの半歩後ろを歩く。
辺りになんもないのに歩けるんだ…人間コンパス…
そんな馬鹿な事を考えていると案内人さんはずいっと黒手袋をした指を折った。
「ひとつ。貴女様の死因は溺死です。低体温症もありますが。」
やっぱりあの時沈んじゃったんだ。
「！じゃあ拓司はどこですか？！一緒に沈んでいたんですけど！」
「伊沢拓司ですか？調べたところ冥府には来ていないようですので現世で生きておられるかと。私の仕事はお亡くなりになられた方対象ですので深くはわかりかねます。」
ふたつめ、とまた指を折った。
「本来ならば私共は死者を閻魔大王様の元へ連れて行きさらに天国地獄それぞれへと案内します。」
「でもさっき釈迦様って」
「えぇ、ですが貴女は一定の徳を積まれたようなので釈迦様から呼び出されております。」
まだ20年ちょっとしか生きてないのに徳？
それに私小さい頃はよく人参を残して怒られてたのに
「緊張せずとも釈迦様は、まあ…会ってみればわかりますが…とにかく、緊張するだけ無駄ですので」
少し苦い顔をして案内人さは言った。
そんなに変な人なのかな。
「さて着きました。この扉の向こう側に釈迦様はおられます。」
10分ほど歩いたところにぽつんと
どうぞと扉を置けられ恐る恐る中に入ってみる。
「天上天下唯我独尊」
「人は苦しみを厭い離れる。 これが、人が清らかになるための道である。」
そこにいた釈迦様は3メートルほどあって坐禅を組みなにかを唱えていた。
なんだか大仏が喋っているような感じ。
「ん”ん”、釈迦様。失礼ですがお呼びになっていた『相場A』様をお連れいたしました」
私の名前…！
案内人さんが少々大きめの声で告げると釈迦様は喋るのをやめ、ゆっくりこちらを向いた。
大きいせいか少し威圧感があって怖い。
釈迦様は教科書で見たイメージとは違い少しふくよかで坊主、つり上がった紫色の眼に頬には涙のように線が引かれている。口紅は細く引いてあり眉はない。
ゆっくり目を開いてやっと私を見つけた。
「わー！やっと来た〜！Aちゃんね？」
神秘的だぁという印象とは裏腹、急にギャルみたいな口調で喋り始めた。
その様子に後ろで案内人さんはやれやれと眉間を触ってため息をついている。
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作者名：ピーチフラペチーノ | 作成日時：2024年3月11日 18時
