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▼第1章 茜色の花手水 ページ3






「んー凄くいいところね」

東京の喧騒から離れて今は湖でボートを漕いでいる。
今は紅葉の見頃が終わりかけ、少し肌寒くなってきた頃。
なんでも目の前に座る彼女が自然に触れたいというからはるばる3時間かけてここまできたわけで。

休日だけどあまり混んでいない地方のボート体験。少し小さめのボートを俺1人が漕ぎ、もう沿岸からだいぶ離れて水位も高い。

「あ、見て蝶々!」

彼女がひらひら飛ぶ蝶を指差す。
そして目の前で楽しそうにはしゃいでいるのが相場A。もう付き合って4年弱になる恋人だ。


「珍しい種類だね」

「うんうん見たことないもん!来てよかった〜」

連れてきてよかった、そう付け足して崖と崖に挟まれた谷間あたりで俺は一旦漕ぐ手を止めた。
本当に静かなところだ。水面は揺らがず、落ちてきた紅葉が綺麗に波紋を作りあたりを埋め尽くす。それはさながら花手水のようだ。

Aと少し雑談をして、静かにして、雑談して、静かにして、を繰り返しその時間をいつもの数倍ゆっくり過ごした。
すると急にびゅぅっと突風が吹き、ボートを少し揺らした。

「きゃ、」

彼女の長い黒髪がなびくと、被っていたつば広のキャペリン帽が飛んで行ってしまった。
帽子は湖に身を乗り出した枝に器用に引っかかる。

「ねね、拓司もうちょっと近くに寄って」

落ちたのが陸近くのためボートで寄るのは至難の技だ。Aはボート上に立ちうーんと腕を伸ばしている。


「俺がとってあげようか?」

「ううん!私が取る!」

精一杯頑張るAをあぐらをかいた膝に肘を乗せて眺めていた。
彼女が腕を伸ばす事で真っ白なワンピースの裾が持ち上がり、少し広く見えるようになった足首がなんとも綺麗だ。(あんまりジロジロ見ると彼女から割と強く小突かれるので程々にしているが…)




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作者名:ピーチフラペチーノ | 作成日時:2024年3月11日 18時

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