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「どうしてあそこの横断歩道を一人で渡ったんだ」
「あい一人で渡れないなんてことわかるだろう？」
家に帰ってあいに問いかける。
すると途端に泣き出してしまった。
初めて俺のおにぎりを食べた時とは違い、わんわん大声をあげて泣いている。
「ごべんなさい！置いていかないで！」と…小さな手で俺のズボンにしがみついていた。
「うんうん、置いていかないから、ゆっくりあった事を話してごらん」
あいの体を膝の上に乗せて少し体を揺らしてみる。
ふわっと抱きしめて肩を叩いてあいが喋るのを待っていた。
するとあいは不意に立ち上がってどこかへ行ってしまった。
数十秒後に戻って来た手には紙袋があった。
そういえば…川上が『あいちゃん紙袋持ってましたよ』って言ってた気がするな…。
「それ、なあに？」
「これね…あげる」
折った膝の前に紙袋をポンと置いてあいも座った。
開けていいという事なのかな。
可愛いクマのシールを取って中身を出してみる。
それは可愛いながらも少し潰れてしまっているガトーショコラだった。
「これ…」
「1日はやいけど…バレンタイン…」
こんな物作れたのか…いやそれより、美味しそうで上にかかったアラザンがキラキラ光っていた。
嬉しさのあまり言葉が出ない俺をよそにあいは喋った。
「最近ね…駿貴パパいそがしそーだったから…元気になればとおもってつくったの…。でも心配になっちゃって…気づいたらあの横断歩道をわってたの…」
またポロポロと泣き出すあいが言う言葉を理解するのに時間がかかった。
俺はおもむろに立ち上がり、冷蔵庫の前まで行った。
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作者名：ピーチフラペチーノ | 作成日時：2022年9月17日 11時
