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タイルで舗装された街路を踏みしめて俺は走っていた。
少し日は落ちていて、影は伸びつつある。だけどまだ明るいには明るい。
走りながら上を見てみると、緑は彩度高く俺の目に映っていた。
真夏の夕暮れ前。
昼の温度が下がることなく、太陽の陽は俺に照りつけている。
そして走っているので、脂汗が止まらなく、背中に吸い付くシャツが気持ち悪い。
いつか、こうやってあいを求めて走っていた時があったな。
保護施設にタクシーを降りて雪の上を走ってた。
懐かしい。あぁ…懐かしい。
あいの、笑った顔、寂しそうな顔、困った顔、眠った顔。
全部全部脳内に蘇ってくる。
『ありがとう…!』
『元気になればと思って作ったの…』
『置いてかないで…』
『駿貴パパ!どう?』
「あぁ…あい…」
俺が愛したのは須貝あいであり、神宮寺Aではない。
でもあいがAに戻りたいというのならそれでもいい。
俺の勘は当たっていたようだ。だったら尚更、全てを受け入れよう。
きっとあいはオフィスにいる。帰ってくる。
待っててね、あい。今行くからね。
〜〜
もう少し走りやすい靴で公園に行けばよかったと後悔する。
かかとが靴づれを起こしているのを、走りながら感じる。
きっと駿貴パパはオフィスに帰ってくる。
イザワサンとしがにぃなら、そう仕向けると思うから。
短距離走の勢いで走っちゃったからか、息が切れる。
長距離走嫌いなんだよね…。
赤信号で止まり、膝に手をついて息を整える。
蒸し暑い中、人がごった返す東京は見ているだけで嫌になっていたけど、今ではなんだか鮮やかに見える。
ここがあいの故郷だと。
あいはもう、Aを捨てるよ。
前の家族の思い出も、次自分から開けようとしない限り開かない宝箱の中に入れて鍵をかけておこう。
青信号になりまた走り出す。
やっと踏ん切りがついた気がする。もう家族は駿貴パパだけ。
やっぱり、あの飛行機に乗ったのは、人生最大の過ちだったと思う。
でも駿貴パパに出会えたのは人生最大の幸運だ。
「待ってなんかいられないよ、会いに行くよ」
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作者名：ピーチフラペチーノ | 作成日時：2022年9月17日 11時
