Crimson memory〜赤き記憶〜3rd

No.114 ページ19

尊を自宅へ送った後、次は薫の自宅へと向かっている。

穂波の顔は見えないがまだ怒っているように見えた。

後部座席で体育座りになっていると自宅付近に着いた。

穂波が先に降りて後部ドアを開けてくれる。

『ありがとうございます』

「ここからは車が通れないから歩きましょ」

『はい』

元々旧鎮目町の道路には大きな溝や地盤が変化して盛り上がってしまったところがある。

その為、車などは通れなくなっていた。

「明石さん」

『は、はい』

「次の試験はいつだったかしら？」

『…今週の土曜日です』

穂波は困り顔で小さく息を吐く。

「そんな状態で本当に大丈夫なの？」

『……、草薙さんに根を詰めすぎだって言われて、…それで今日少し息抜きを』

「それでも、夜遊びは駄目よ」

『はい、すみませんでした』

「…………」

深く反省してる薫を見て、穂波は穏やかな表情に戻り、いつもの優しい声で話し出した。

「もうこの話は終わりにしましょうか」

『ぇ、あ…はい』

「ところで、周防くんとは楽しくやってる？」

『はい、今は試験とかバイトであんまり一緒にいる時間が少ないですけど、空いた時間はほとんど尊と一緒にいますよ』

「二人でどこかに出掛けたことはあるの？」

『いえ、ないです』

「明石さんはどこかに出掛けたいとは思わないの？」

『えーと…私は尊と一緒にいればいいかなって思ってるので、遠くに出掛けたいってことはないですね』

「まぁ、人それぞれよね。でも二人だけの特別な思い出を作るくらいは、いいんじゃないかしら」

『……私は、……』

「あら？もう着いてしまったようね」

顔を上げると見慣れたアパートが目の前にあった。

「明日の放課後、ちゃんと来てね」

『忘れたりしませんから、大丈夫ですよ』

「うふふっ、そうよね。それと、もう１つ。明石さんはもっと欲張った方がいいわ。色々と遠慮し過ぎ」

『そう見えますか？』

「ええ。放課後までに何か考えてきてね」

『……努力します』

「はい。じゃあまた明日ね」

『…ありがとうございました』

穂波は小さく手を振り、来た道を戻って行った。


欲張るって何をしたらいいんだろ……

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