Crimson memory〜赤き記憶〜3rd

No.109　尊side ページ14

数分後、周防はようやく薫を離した。

もう何時間も抱き締めていたように感じる。

薫は少し周防から距離を離し、困惑した表情で見つめてきた。

『……』

「…わりぃ」

『ううん、私の方こそごめん。まだ酒が残ってるっぽい』

「そうか。………行くか？」

ただ街をぶらぶらするだけだが、酔い覚ましの代わりにとドアの方を指す。

『…うん』

特に目的もなしに街を流れ歩く。

いつもの、無意味な行動。

いや、今回は少し意味のある行動だ。

周防は改めて薫の様子を眺める。

深夜二時すぎの鎮目町を歩くのが初めてな薫はキョロキョロと街並みを見ている。

今まで周防の周りにいた者は、周防を怖れて遠巻きにする者か、敵対意識を持つ者、媚びることで周防の威を借りたり盾にしようとしたり、あるいは周防の近くにいると自分まで強くなった錯覚を覚えるような者のどれかだった。

そして周防の側に踏み込む連中の多くは、踏み込んできて殴りかかってくる奴か、あるいは踏み込んできて寄りかかろうとしてくる奴ばかりだった。

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