机上の池袋【折原臨也】 (ページ22)

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22話ページ22

｢いやぁ、走った走った
シズちゃんから逃げる以外で走るなんて久しぶりだよ｣

さっきから鼻歌交じりで隙あらば思い出し笑いをしながら事務所の玄関の鍵をガチャりと開ける

私がかなりびびったせいでその場から駅まで走ったにも関わらず、やたらと上機嫌なのは上手く平和島静雄をからかうことが出来ただろうか、こちらとしては不服だが

｢君のあんな表情を見れたのは気分が良いものだね、高校１年生らしくないしどこから仕入れた情報だかよく分からないのいっぱい持ってるみたいだし、正直不気味だけど君も愛すべき人間なんだって実感したよ｣

｢...そりゃどーも｣

いや別に嫌いとか苦手とかそういう訳じゃないけども...本能的な危険を感じればそりゃ涙ぐらいでる...はず

｢あくまで君個人を愛してる訳じゃなくて人間という1括りで愛してるんだけどね｣

｢はあ...そうですか｣

意気消沈、撃沈、アメリカに沈められた戦艦よろしく気分は沈没船

涙腺が痛い、塩分とりたい

特に臨也さんの言葉に反応を示さない私に興味を無くしたのかさっさとデスクに向かいカタカタと何かを打ち込み始めた

こっちも特に頼まれた仕事もないしポスリとソファにしなだれる様にして倒れ込む
｢人間って...｣

｢なぁに？｣

私の方に向くわけでもなく視線はパソコンのまま応答してくれる

｢人間が好きって、そもそも人間の定義はなんですか｣

｢...難しいことを聞くねぇ、どうかしたの？｣

｢...いやまあ頭の悪い私に哲学を語るなんて大層なまね出来ないんですけども
ぶっちゃけた所質問がしたいって言うか臨也さんに興味があるというか｣

｢へぇ、俺の全てを知ってるなんて豪語しておきながらまだ知りたいなんてAちゃんは貪欲だなぁ｣

｢...臨也さんがそれ言います？｣

情報屋なんて名乗ってるくせに、決定的な一撃で、ちょっとした、だけども本当に会心の一撃とでも言おうか、小さなことだけど絶対に他人の人生を壊してしまうようなことをさりげなく知ってるんだから

｢質問って答えてくれたりします？｣

ソファから身を起こして臨也さんの方を向くとちょうど目が合った

｢今日は気分がいいから答えられるやつだけね｣

｢ほんとですか！｣

嬉しそうに身を乗り出すとまた人の悪そうな笑顔になる

｢無料の情報ほど危険なものはないよ、まさか鵜呑みにする訳じゃないよね｣

｢社員割引ってやつないんですか｣

｢...ある訳ないじゃん、喰えない奴だな｣