3話 ページ3
どうしようもない吐き気が2人の女に襲いかかる。それは『奈倉』さんに対する嫌悪感から来るものだったが
それとは別に、彼女らの視界がぐるぐると回り始める。
「!?」
「なに.....これ.....」
自分たちの身体の異常に気づいた時には既に遅く、もはや立ち上がる気力すらも奪われていた。
「第3問。君たちがいっせいに俺に向かって来れば助かるかもしれないのに、なんでそれができないんでしょうか」
「...」
さて、ここは彼女たちと一緒に薬が回った振りをするべきか、それとも
「ヒント、ワンドリンクを運んできた時、俺が君達にコップをまわしました。」
ここで立ち上がり彼を驚かせるか
「愛だよ」
「君たちの死に愛が感じられない」
「駄目だよ、死を愛さなきゃ」
「そんなんじゃ一緒には死んでやれないなぁ」
...きっと驚かないだろうなぁ
どんなに想定外でも彼はさも知ってました。全て見通してますよーってのが彼だろう
「絶対.....許さない!殺して.....やる.....!」
一人の女が最後の力を振り絞って『奈倉』さんを睨みつけ恨み言を言うのを『奈倉』さんは聞いて嬉しそうな表情になる。
この後は確か
抱きしめるんだっけ?
「いいね結構、恨む気力があるなら生きられる。
凄いなぁ俺!君の命の恩人じゃん」
「...」
「ところで君は」
抱きしめていた女からぱっと手を離し彼女が床に転がる
「なんで起きているのかな?」
殺気をぶつけられた気がする。笑顔なのに
確かに笑顔なのだ、笑顔なのに、笑顔でありながらどこまでも冷淡で、そして
笑顔であるが故に、見るものに果てしない恐怖を与える
と言ったところか。
「飲んでないからに決まってるじゃないですか、睡眠薬入りなんだから」
「へぇ」
なんだ、バレてたのかと特に気にしていないかのように振る舞う彼
「もしかして復讐にきたのかな?俺の手を全て知っているみたいじゃない、それって。残念ながら俺は君のこといっさい覚えてないけど」
「あー、いや、今日初めて会います。」
「ふーん、じゃあ誰か身内の復讐?」
どこまでも笑顔だな、この人
こっちが全て知っているのに、何故だか彼の方もそれを知っているのではと思ってしまいそう。
「違います」
気圧されては駄目だ
今日からなのだ、やっと
やっと実るのだ
私の16年間の努力はこの日のため、この日、この人と会うために私は頑張ってきたのだ。
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空白@不定期浮上(プロフ) - 面白いと思ったので更新して欲しいです! (2020年5月3日 18時) (レス) id: 015a9f265e (このIDを非表示/違反報告)
名倉 - めちゃくちゃ面白かったです。応援してます (2019年6月11日 23時) (レス) id: 9a5df359f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるみるみるとん | 作成日時:2019年3月23日 16時